2016 Fiscal Year Research-status Report
企業のイノベーション創出プロセスと組織における多様性の研究:吸収能力の視点から
Project/Area Number |
16K03902
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
山崎 秀雄 武蔵大学, 経済学部, 教授 (30366968)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 健哉 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (60265775)
山田 敏之 大東文化大学, 経営学部, 教授 (10453664)
横尾 陽道 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (30382469)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 経営学 / イノベーション / 多様性 / 吸収能力 / 組織学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は、日本の製造企業に対し、イノベーション創出力の基盤強化・再構築のキー・ファクターを提示することにある。とりわけ本研究では、組織における多様性(個々の従業員や各部門・チームが保有する知識やスキル、考え方における多様性)の程度や、組織における知識の吸収能力(absorptive capacity)にフォーカスし、それらの要素が企業のイノベーションの創出に与える影響について、理論的・実証的な分析を試みている。 平成28年度においては、文献サーベイに基づく理論研究に加え、国内の大規模製造企業(計1,231社)を対象に、郵送法によるアンケート調査を実施した。また、一部上場の日本企業2社にヒアリング調査を行った。 単年度の結果ではあるが、平成28年度に行ったこれらの活動からは、(1)過去の成功体験を重視しないトップ・マネジメントのいる企業では、従業員が多様な知識や考え方をもって仕事にあたっている、(2)多様性を備えた組織では異部門間のコラボレーションが組織学習をより活性化させている、(3)組織内での信頼関係の構築が多様性をイノベーションへと結びつける基盤となっている、(4)多様性を活かす組織学習の実践にはコミュニケーターやカタリストとして機能するミドル・マネジメントが一定の影響を与えている、といった傾向をある程度読み取ることができた。 また、組織における知識の吸収能力に関しては、研究開発集約度(売上高に対する研究開発費の比率)が大きい企業ほど研究開発プロセスのより上流のフェーズで社外知識を積極的に活用する傾向がみられ、さらにこうした社外知識の活用度合いは創造的な組織学習の活発さとの間に一定の相関があることを確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度における進捗状況は以下の通りであり、おおむね順調に進展している。 (1)研究会の開催:平成28年9月24日に第1回研究会を開催。アンケート調査について、検証すべき仮説の確認、タイトル・調査票・発送先リストの確定を行った。また、平成29年3月8日に第2回研究会を開催。プロジェクト・メンバー各自がアンケート調査の1次集計結果をもとに傾向を分析した資料を持ち寄り、成果報告の方向性について議論を行った。その結果「組織における多様性が組織学習を促し、イノベーションの成果へと結実していく過程には、いかなるマネジメント要因が影響しているか」を論点に論文をまとめることとした。 (2)アンケート調査:今回調査では、タイトルを『「IoTと組織の多様性」に関するアンケート調査』とし、平成28年11月9日に調査票を発送した。発送先は、純粋持株会社を除く上場製造企業(事業持株会社含む)、もしくは持株会社傘下の製造業を営む大企業(ここでは「大企業」を、中小企業基本法に基づく中小企業に該当しない企業〔資本金3億円超および従業員300人超〕、もしくは会社法上で定義される大会社〔資本金5億円以上または負債200億円以上〕と定義)計1,231社とし、107社から回答を得た。 (3)ヒアリング調査:平成28年11月4日(一部上場の日本企業A社、業務改革センター長)と平成29年2月22日(一部上場の日本企業B社、人事室上席主幹)に企業へのヒアリング調査を実施した。 (4)論文執筆:アンケート調査結果を中心にまとめた論文をプロジェクト・メンバーで執筆し、平成29年5月18日に武蔵大学経済学会『武蔵大学論集』第65巻第1号へ入稿した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、以下のスケジュールで研究を進める予定である。 (1)平成29年度 4月~6月を目途に、文献調査の継続、およびアンケートの調査票とヒアリング項目の見直しについて研究分担者と検討する。アンケート調査に関しては、7月~9月を目途に、対象企業の再検討・選定を行い、10月にアンケートの調査票を発送、11月に回収、12月~翌年1月にかけてデータ入力と統計分析、2月~3月にかけて結果の解釈とまとめを行う予定である。なおアンケートの実施においては前年度と同様、効率的な調査のため印刷、発送、回収を専門業者へ委託する。またヒアリング調査に関しては、前年度のアンケート調査で特徴的な回答のあった企業群の中から複数社をピックアップし、引き続き組織における多様性とイノベーション創出プロセスとのかかわりという観点から、ヒアリングによるディープ・サーベイも実施する予定である。加えてヒアリング調査では、前年度調査である程度明らかにされた点の確認も可能な限り行いたい。 (2)平成30年度 平成29年度とほぼ同様のスケジュールで研究を進めるとともに、平成30年度には、3年間の調査結果からより精緻な理論構築を試み、本研究の総括となる報告書の作成を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
業務の都合で、検討していた調査出張が一部実施できなかったことに加え、実施した調査出張(ヒアリング調査)でも、プロジェクト・メンバー1名のスケジュールが合わず参加できなかったことが、次年度使用額が発生した主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生した次年度使用額は、主に平成28年度に延期した調査出張の費用として支出する計画である。平成29年度はプロジェクト・メンバーが手分けしてヒアリング調査を実施する等、調査出張の効率的かつ確実な実施に配慮する。 加えて、平成28年度調査の過程で、組織における多様性を創造的な組織学習やイノベーションの実現へと結びつける機能としての「ミドル・マネジメント」にフォーカスした調査の必要性が出てきたため、平成28年度末に同分野を専門とする研究分担者1名の追加申請を行い、承認された。次年度使用額は、この追加した分担研究者が平成29年度に研究を実施する費用にも充てる計画である。
|
Research Products
(4 results)