2016 Fiscal Year Research-status Report
国民社会から世界社会への変動のなかの言語と社会理論――その時代的背景と理論的進化
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16K04035
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
多田 光宏 熊本大学, 文学部, 准教授 (20632714)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 言語 / 理解社会学 / マックス・ヴェーバー / ナショナリズム / 社会学理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した、本研究課題における初年度課題であるマックス・ヴェーバーとエミール・デュルケムの言語観について、テキストデータのコーパス化なども行いながら集中的に研究を進めた。とくに前者ヴェーバーの言語観については、世界最大の社会学会組織である International Sociological Association (ISA) の社会学史部会の中間会議において、以下の通り研究発表(査読付)を行った。
Tada, Mitsuhiro, 2016, “Imagined Linguistic Community: Max Weber and his View of Language,” International Sociological Association, RC08 Interim Conference: Monuments, Relics and Revivals (Warsaw University, Poland, July 06-08 (07)).
本発表により、これまでほとんど正面から論じられてこなかったマックス・ヴェーバーの言語思想を、同じく社会学ではほとんど無視されている社会言語学の諸研究、ならびに国民国家形成過程にあったドイツ帝国の当時の社会背景に触れながら明らかにし、いわゆる理解社会学に対する従来の解釈に一石を投じるに至った。また、本発表にもとづいて英語論文を執筆し、年度末に国際学術雑誌に投稿して、現在は審査結果を待っている段階である。 なお、関連する理論的研究により、日本語による学術論文1本を学会誌にて公刊した(当該学会の招待よる)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究成果を、発表と論文のどちらの形態においても日本語ではなく英語でまとめており、マックス・ヴェーバーの難解なドイツ語を英語に翻訳するなどにあたって予想以上に時間がかかったものの、このことは研究の国際発信という観点から肯定的に考慮すれるべきであり、その意味では進捗状況はおおむね順調に推移していると言える。デュルケムの言語観についても一定の下調べが済んでおり、こちらも英語での成果発表を期したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題による現地ドイツにおける資料等の収集、ならびに言語社会学理論の著名な専門家との研究に関する打ち合わせを実施した後、所属機関の許可を得て、引き続き年度末まで現地に滞在し、本研究課題の推進に専念する。ただし、当初計画とは異なり約1年間滞独することとなったため、ドイツでの受入教員(上記言語社会学理論の専門家)ともよく協議して、2019年度以降の研究課題のための資料収集や下調べなどを優先的に処理することも検討する。また、本研究課題の国際発信力の強化のため、学会や研究会等を通じて現地研究者との積極的な交流も合わせて図る予定である。
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Causes of Carryover |
本課題の研究のため年度末に海外出張の可能性が生じたため、急遽30万円の前倒し支払い請求を受けたが、日程調整の結果、当該出張の大部分が年度を跨ぐこととなり、かつ出張期間の大部分が次年度にずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の海外出張に充当する。
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