2017 Fiscal Year Research-status Report
国民社会から世界社会への変動のなかの言語と社会理論――その時代的背景と理論的進化
Project/Area Number |
16K04035
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
多田 光宏 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20632714)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 言語 / 社会学理論 / 社会学史 / ナショナリズム / 国民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載したとおり、戦後意味学派の言語観と、戦前世代を代表する社会学者であるマックス・ヴェーバーとエミール・デュルケムとの思想的つながりについて、さらに集中的に研究を進めた。またこれについては、とくに海外での資料収集やフィールドワークなどを各所(ベルリン、ミュンヘン、ニュルンベルクなど)で集中的かつ優先的に実施した。結果、これまでの先行研究の少なさに反し、ヴェーバーとデュルケムの二者についてだけでも当時の社会背景や彼ら自身の社会活動との関わりなどで予想以上に深みと広がりのあるテーマであることが判明し、言語学や歴史学などの知識も得て、さらなる掘り下げが必要だと考えるに至っている。なおとくにヴェーバーの言語観については、オーストリア・クラーゲンフルト大学において招待講演(英語)を実施した。また関連テーマで、オーストリア・グラーツ大学やベルリン工科大学社会学研究所などでも、英語ないしドイツ語による研究発表を行うなど、他国研究者たちとの研究交流と情報収集にも努めた。なお、本テーマで英語論文1本が現在査読中である。 また、関連する理論的研究により、英語論文(日本語既公刊論文の英語版)1本を、国際学術雑誌(査読付)において公刊するなどした(Tada, Mitsuhiro, 2018, “Time as Sociology’s Basic Concept: A Perspective from Alfred Schutz’s Phenomenological Sociology and Niklas Luhmann’s Social Systems Theory,” Time & Society, first published online: January 29, 2018, DOI: 10.1177/0961463X18754458. )
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究成果を研究発表と論文のどちらの形態においても主に英語でまとめており、そのためマックス・ヴェーバーやエミール・デュルケムの難解な母語のテキスト(ドイツ語やフランス語)を独自に英訳する必要があり、これに予想以上の時間がかかっているが、このことは研究の国際発信という観点からすれば肯定的に考慮されるべきであり、その意味では進捗状況はおおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状としてはおおむね順調な進捗状況だが、上述のとおり、過去2年間の研究の進展のなかで、本申請テーマが、ヴェーバーとデュルケムの二者についてだけでも予想以上の深みと広がりがあることが判明した。そのため、申請者の専門分野である社会学のみならず、言語学や歴史学についてもかなり高度な知識と理解を駆使する必要がありそうである。よって、研究計画を若干変更し、研究計画三年目以降も引き続き、戦後世代の社会学者よりも、戦前世代のヴェーバーとデュルケム、またこれらの人物に関連する社会言語史的背景などを中心に研究することを検討している。この二者の言語観はその後の社会学理論家たちの言語観の通奏低音となっているため、これを押さえることが、結果として、戦後世代の社会学者に関するその後の研究のスムーズな進展に寄与するはずである。研究手法そのものは、これまでと変わらず、主に入手資料の分析により行う。
|