2017 Fiscal Year Research-status Report
ナショナルなシティズンシップの分断と移民・難民・先住民族:社会学的日豪比較研究
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16K04094
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塩原 良和 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (80411693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会学 / 移民 / 難民 / イスラム / オーストラリア / 排外主義 / シティズンシップ / レイシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代の社会変動がもたらす国民国家のシティズンシップの変容を、エスニック・マイノリティとマジョリティ国民の関係性の変化という視点から考察することで、日本を含む先進諸国における多民族・多文化共生の社会学的研究に貢献することを目指す。 2017年度は、9月、11月、3月に、それぞれ1週間から10日程度のオーストラリアでの現地調査を行った。調査は聴き取りとインタビュー、参与観察、文献資料の収集を行った。フィールドワーク・インタビュー調査としては、オーストラリアにおける移民の社会参加のケーススタディとして、シドニーやメルボルン、キャンベラにおいて市民活動に関わる日本人移民への聞き取りや、イベントの視察を重点的に行った。またオーストラリアの大学に勤務する、問題意識を共有する研究者との意見交換や研究交流を積極的に行った。さらにモナシュ大学やオーストラリア国立大学で行われた研究会やシンポジウムに参加し、研究報告の機会を得ることができた。文献資料の収集としては、オーストラリアにおける、庇護希望者問題を含む人種差別の歴史や近年の排外主義の台頭に関する先行研究や公文書資料などの収集を、オーストラリア国立図書館やNSW州立図書館を中心に行った。また、オーストラリアのマスメディアにおけるイスラム嫌悪の表象のあり方を分析するために、現地の新聞記事の20年から30年分のテキストデータを収集した。来年度以降、本格的な調査を進めて業績として発表していくことを目指す。 これらの調査をもとに、2017年度中にいくつかの単著や編著書などを発表することができた。また公刊した単著に関する書評会も企画することができた。このように、調査研究は、若干の計画変更はあったが順調に進展し、成果も発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、従来あまり日本では先行研究がなかった、オーストラリアにおける排外主義の歴史的進展と現状についての資料収集と分析を進めた。それに加えて、イスラム嫌悪の表象のあり方を計量的に分析するために、新聞記事20年から30年分のテキストをデータ化することができた。このように、今日的な課題を扱う本研究では、現実の政治・社会状況の変化に応じて研究計画を変更しなければならないことがあるが、にもかかわらず臨機応変に対応し、順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、オーストラリア社会における排外主義の台頭と、それに伴う移民政策の排外主義的転換が顕著になっている。これは米国やヨーロッパ政治における移民への排外主義の台頭とも連動しており、非常に重要な研究課題となっている。2018年度に入っても、オーストラリアの政治・社会状況において注目すべき動向が起きている。そこで2018年度も引き続き、移民・難民への排外主義に焦点を当て、オーストラリアの政治・社会の動向を分析していくことにする。
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Research Products
(11 results)