2018 Fiscal Year Research-status Report
「選択と集中」の論理がもたらす地方自治の危機に関する社会学的研究
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16K04106
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
熊本 博之 明星大学, 人文学部, 准教授 (80454007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地方自治 / 沖縄 / 在日米軍基地 / 普天間基地移設計画 / 辺野古 / 軍事化 / 自衛隊基地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、沖縄における軍事基地建設問題の事例研究を通して、「国土のグランドデザイン2050」で「選択と集中」の論理に基づく地方政策の方針が示された結果、地方公共団体が「住民の福祉の増進を図る」という本来の機能を発揮できなくさせられていることを明らかにした上で、このような体制下において本来の地方自治を実現するための方策を探っていくことである。 今年度は主に、普天間基地移設計画をめぐる沖縄と政府との関係に着目した研究を進めた。2018年8月に翁長雄志沖縄県知事が逝去したことを受け、9月30日に県知事選挙が行われ、辺野古移設に反対する玉城デニー氏が新たな知事となった。2019年1月24日には「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」が行われ、40万を超える反対票が集まった。この2つの選挙を巡る市民の動きを那覇市や名護市、特に辺野古地区で視察し、全県的には辺野古移設反対の機運が高まるなか、建設を容認している辺野古地区住民が次第に孤立していく姿を見てきた。 また事実上受け入れを容認している渡具知武豊を市長に迎えた名護市には、米軍再編交付金の交付が再開しており、これを原資とした給食無償化政策などが実現していく現状についても考察してきた。政府の政策に協力するか否かで市民の生活に関わる施策の実施が左右される現状は、地方自治のあるべき姿と乖離しているといえよう。 これらの研究の成果は、学会や論壇誌で発表したほか、テレビ番組(NHK「あさイチ」)への出演、全国紙および地方紙への記事の寄稿を通して社会への還元に努めた。 なお今年度は研究計画の最終年度であったが、普天間基地移設計画はまだ途上であること、また宮古島や石垣島における陸上自衛隊配備計画も進行中であることから、2019年度まで研究期間を延長し、調査の継続を図ることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要選挙時の視察を行うことで、沖縄における世論の変容を直接確認することができている。辺野古地区でのフィールドワークも継続的に続けており、ラポールの形成も順調に深まっている。 先島諸島の陸上自衛隊配備計画については、現地での調査はできなかったが、同問題について研究を進めている池尾靖志氏(立命館大学)より情報提供を受けるなど、情勢の変化についてのフォローはできている。
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Strategy for Future Research Activity |
4月20日の衆議院議員選挙沖縄三区補選を視察する(視察済み)ほか、7月に予定されている参議院議員選挙の視察を予定している。こうした選挙時の視察に加え、辺野古地区でのフィールドワークを継続しつつ、昨年度は実施できなかった先島諸島における陸上自衛隊配備計画についての現地調査を行う予定である。 上記の調査を進めつつ、研究成果をまとめ、単著としての出版に向けた作業を進める。
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Causes of Carryover |
普天間基地移設計画、および先島諸島における陸上自衛隊配備計画はまだ進行中であり、継続的な調査を進めるため、次年度使用額を残した。次年度使用額については、沖縄本島および先島諸島でのフィールドワークの遂行、および研究遂行のために必要な書籍や物品の購入のために使用する。
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