2016 Fiscal Year Research-status Report
障がい者の生活領域拡大に対応する新法体系確立にむけた実証的研究
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16K04148
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
矢嶋 里絵 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (40254130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 明彦 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60310182)
鈴木 静 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (80335885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 障がい者の人権 / 障がい者法 / 社会保障裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
障がい者法における理念の特徴・課題について理論的考察を深めるため、①法制定過程及び改正時における理念をめぐる議論状況を関連文献・史料に基づき検証する、②福祉・医療・所得保障・虐待防止・差別禁止等、障がい者関連法全般における法理念に関する議論状況を、人権保障の観点から検討し、各法における理念相互間の関係性及び整合性について総合的かつ横断的に整理分析することが本研究の目的である。 そのため、初年度にあたる本年度においては、以下、実施した。第一に、各研究者が、既存の文献・史料のさらなるレビューを行ない、そこから得られた知見を研究課題に即して整理分析した。第二に、個別当事者の権利回復のみならず、社会保障行政や立法の改善に資するという裁判の意義に着目し、研究会を開催した。第1回研究会(2016年5月実施)では、研究者の視点から「社会保障裁判研究の方法、意義と課題」について、第2回研究会(同年10月実施)では実務家(弁護士)の視点から、「社会保障裁判の意義と効用」について報告を受けた後、議論を行った。これは、平成29年度の研究計画を一部前倒しして実施したものである。第三に、「障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例」や「欠格条項例外条例」の制定等、先進的なとりくみを行っている兵庫県明石市を訪問し市役所担当職員から聞き取り調査を行い(2016年12月実施)、その結果を研究者間で共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①関連文献のレビューについて: 各研究者が既存文献のレビューを行い、メールや研究会等で、研究の進捗状況を報告し、研究の方向性について相互に確認を行った。 ②社会保障裁判にかんして:まず、研究者の視点から、法解釈学・法社会学論争と判例研究、権利としての社会保障法と判例研究-判例研究から裁判研究へ-、人権の時代における社会保障裁判研究の意義、社会保障裁判および研究の課題について、つぎに、実務家の視点から、社会保障裁判の端緒としての朝日訴訟、社会保障裁判の意義、社会保障裁判への国の対応、社会保障裁判の立証責任の重要性、裁判進行のための他分野の人々との協力、研究者・国会議員の役割について、専門的知識の提供を受け、それに基づき議論を行い考察を深めた。 ③先進的自治体(兵庫県明石市)におけるとりくみについて:障害者差別解消条例の概要と実績、同条例制定過程における障がい者や家族の参加、自治体施策と国施策との関係(条例と障害者差別解消法等)、同条例の市民浸透度と市民理解を深めるための課題、他条例との関連、今後の課題等につき、知見を得ることができた。 上記①から③のいずれにかんしても、報告・議論・調査・資料の内容についてメール・ドロップボックスの活用によりメンバー全体に周知することに配慮し、各研究者が論文や学会活動等を通じて研究成果を発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①国内外の先行研究レビューを追加して実施するほか、未発掘の史料の掘り起こし作業を行う。 ②裁判事例に関しては、法が障がい者の生活実態からいかに乖離しているのか、どんな問題が生じているのか、紛争解決の実態を、学説・司法解釈双方の視点から明らかにする。具体的には「小川政亮戦後日本資料」(明治学院大学所蔵)の分析や、障がい者関連裁判を担当した弁護士や当事者から可能な範囲で資料の提供を受け、分析を行い、判決・決定に至る訴訟経緯についてヒアリングを行う。
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Causes of Carryover |
・聞き取り調査のための支出額が予算額を下回った。 ・文献資料収集・分析のための支出額が予算額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①関係者からの聞き取り調査を行うための経費を支出する。②日本・外国の関係文献・資料の購入・複写のための経費を支出する。③研究者同士の情報交換、研鑽を図るため開催する研究会に要する経費を支出する。なお、集中的に議論を行うため、授業期間以外の夏季又は冬季に合宿形式での研究会開催を計画している。
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