2016 Fiscal Year Research-status Report
「子どもの貧困」問題解決にむけた包括的支援と地域再生における公私連携・協働
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16K04159
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小沢 修司 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (80152479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 正雄 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (30180293)
上掛 利博 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (30194963)
吉岡 真佐樹 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (80174895)
長谷川 豊 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (90254317)
田所 祐史 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (40772140)
下村 誠 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (90387332)
朝田 佳尚 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (60642113)
杉岡 秀紀 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (10631442)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子どもの貧困 / 包括的支援 / 公私連携・協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「子どもの貧困」問題の解決には包括的で重層的な支援が必要であり、その支援を提供する地域社会を公私連携・協働の促進を通じて再生する重要性を明らかにしようとしている。 今年度は、先進事例・地域調査を中心に、自治体やNPOへの訪問・ヒアリング調査等を行ってきた。具体的には、ユニバーサルな子ども支援策に取り組む兵庫県明石市(9月)、「子どもの未来を応援する首長連合」の呼びかけ人ともなった佐賀県武雄市(3月)を訪問し、市長をはじめ関係部局のヒアリングを実施した。訪問調査等を行ったNPOは「子どもソーシャルワークセンター」(滋賀県)、「山城醍醐こどものひろば」(京都府)、「スチューデント・サポート・フェイス」(佐賀県)等である。佐賀県ではNPOが事業委託を受ける「さが若者サポートステーション」等も視察等行った。また、子どもの貧困率の極めて高い沖縄県の取り組みを把握するために日本子ども社会学会第23回大会(琉球大学、6月)に参加するとともに、NPO「子どもの貧困センターあすのば」が全国各地で開催する会合(兵庫県明石市、高知県高知市、東京)にも参加した あわせて、2016年春に「子どもソーシャルワークセンター」(滋賀県)を立ち上げたスクールソーシャルワーカーでもある幸重忠孝氏を招いて、福祉社会フォーラム2016「子どもの貧困と向き合って―いま求められる子ども支援のあり方ー」(京都府立大学、9月)を開催し、幸重氏の講演とともに小沢研究代表とのトークセッションも行った。この内容は『福祉社会研究』第17号(2017年3月)に掲載した。 なお、小沢研究代表者と長谷川研究分担者は京都政策研究センターと京都府との協働研究に参加し(小沢が代表)、スクールソーシャルワーカーを中心に府内各地の支援者へのヒアリング調査を行った(「子どもの貧困対策の推進に係る調査研究」報告書、2017年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要にも記載した通り、先進事例・地域への訪問・ヒアリング調査について、積極的に行ってきた。特に、明石・武雄の両市の調査では、子ども支援を市政の最重要課題に位置づけて率先行動される市長から直接ヒアリングできた点は大変有益であった。地域再生における公私連携・協働のあり方を考える上で、自治体の姿勢はきわめて重要であり、両市のいわゆる「子どもの貧困」対策に留まらない子ども支援の包括的な施策は大いに参考になった。 また、「子どもソーシャルワークセンター」代表の幸重忠孝氏や「スチューデント・サポート・フェイス」代表の谷口仁史氏らは、子ども・若者支援活動に民間側から長年携わってきており、すでにそれぞれの地域の中で公私連携・協働の取り組みへと発展させてきている点が調査からうかがえた。とりわけ谷口氏らが進めるアウトリーチの手法は今後一層求められる。 これら公私の取り組みが狭義の「子どもの貧困」対策ではなく子ども・若者に対する包括的で重層的な支援策として進められる点が本研究の意図するところとも合致する。その上で、これらの公私連携・協働が地域再生へとつなげていくためにもそれぞれの地域において持続可能な展開を遂げる必要があろう。 この点で、地域における公私連携・協働の多様な実践が重要であり、本研究の一つの柱として学習支援事業に基礎をおいたモデルの可能性を京都府長岡京市における3年間の事業を通して探っているが、自治体内の教育と福祉部局の連携のあり方や、地域における多様な子ども関係団体との支援にかかるプラットフォームの構築、支援スタッフの継続的な確保・育成の課題等が明らかになりつつある。概要でも記した京都府との協働研究で明らかになった地域で連携した体制を築くうえでの諸課題を踏まえて、検討を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目も、全国から先進事例・地域を選定しひきつづきヒアリング等の調査を進める。具体的には、子どもの貧困率の高い沖縄県や大阪市とともに、子ども未来創造局を立ち上げた大阪府箕面市や日本財団が支援プロジェクトの第1号に位置づけた埼玉県戸田市等の自治体、子どもの貧困対策センターやさいたまユースサポートネット等のNPOや子ども・若者支援組織を訪問調査する。 あわせて、世界で最も早く「子どもオンブッド」制度を設けて、国家・社会が子育てに責任を負う制度を確立したノルウェーにおいて、児童家庭省や子どもオンブッド事務局、オスロ市の市役所や保育園、福祉関連事務所等を訪問・ヒアリングを行う。これらヒアリング調査等に傾注し、計画調書に記したアンケート調査は行わない。 また、4年度目となる長岡京市の学習支援事業を起点として、包括的で重層的な子ども支援の公私連携・協働実践のモデル形成にとって課題となる、支援スタッフの育成や地域内の諸団体との共同共有のためのプラットフォーム構築を試みる。
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Research Products
(11 results)