2017 Fiscal Year Research-status Report
三陸思い出パートナープロジェクトの実際と多面的効果
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16K04214
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
野村 豊子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (70305275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊波 和恵 東京富士大学, 経営学部, 教授 (90296294)
野崎 瑞樹 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 准教授 (90322429)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 回想法 / ライフレヴュー / アートセラピー / 世代間交流 / 震災復興支援 / 生きがい活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
三陸思い出パートナープロジェクトの展開を以下のように実施した。 ①岩手県宮古市において4月23・24日にボランティアに対するグループ回想法の研修と仮設住宅・復興住宅に居住の高齢者に対してアートセラピストの協力を得て、各自の写真を持ち寄り、子育ての思い出をテーマに描画や小石を用いてアートセラピーを行った。豊かな発想の作品群が出来、参加者は自分の作品の説明の中でライフレヴューを語られた。一ヶ月後にさらに作品を完成させ持参される方もいた。②6月3日に宮古市内公民館において回想法研修・ボランテイアの会(もやいの会)の仮設住宅における実施へのスーパービジョンを行う。③9月7日に盛岡市の福祉専門学校学生20数名の参加により高齢者、学生、保健福祉関係者の世代間交流を含めた回想法グループを実施。回想法の基本、見守り研究の動向に関する小講演と「運動会の思い出」をテーマに5つのグループに分かれ、語り合った。参加高齢者から若い世代に伝える大切さと楽しさが示され、学生からは高齢者観の変化、将来の福祉職への希望等が示されていた。④10月28日に思い出パートナーの会を仮設住宅・復興住宅居住高齢者40名、もやいの会、学生、行政関係者計約70名の参加により実施する。「秋の日の忘れ難い食べ物の思い出」をテーマに各10人のグループに分かれて語り合う。終了後、参加高齢者が各グループの内容を紹介し共有する。毎年の会の開催を心待ちにしている方もあり、旧知を温める機会ともなっている。 研究成果に関しては、日本老年社会科学会3本、日本発達心理学会1本の報告をポスターにより発表し、東京・名古屋市において複数回、研究グループ「語りと回想研究会」の場で経過とその都度のまとめを報告している。各研修会の事前打ち合わせを主に東京において複数回実施し、データの分析と検討を重ねてきた評価方法の進捗を基に、研究成果の詳細な検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗はおおむね計画通りであるが、次の点で計画を変更している。 当初の予定では、津波の被害に遭われた高齢者の方々への個人ライフレヴュー(訪問による)を検討していた。しかし、行政関係者への事前ヒヤリング、地域のケアマネージャーへのインタヴューを実施し戸別訪問の困難な状況が明らかになった。個人ライフレヴューの方法の学習をもやいの会のメンバーで希望する方には継続し、実際にライフストーリーブックの作成の方法を研修で行い、高い関心が示されていた。聴き手としてライフレヴューを伺う役割ではなく、自らの人生を振り返る機会とされたい意向が強く見られた。津波の直接の被害には遭われなくとも、親戚、教え子、隣人を失い、自宅の移住を余儀なくされた方等全てのメンバーが何がしかの重大な危機を越えてきている。聴き手ではなく語り手として互いに分かち合うことを重視し、ボランティアとしてだけではなく、自然の暮らしの中で相互に支え合う地域の主体になられている様子を確認できた。訪問ライフレヴューについてはアートセラピーの中で、また、ライフストーリーブックの展開の経過で、グループの中の個人の視点で組み直すことに変更した。 様々の研修、学生との世代間交流、地域の保健・福祉関係者との連携等については、各関係者の協力と積極的な参加の意向により、順調に展開している。岩手県の他地域の保健・福祉関係者、関東からの参加者等広がりを見せている。秋に行う「思い出パートナーの会」の準備と実施に関わるもやいの会のメンバーの力は、自主的な活動や、研修からの自信も加わり、目を見張るものがある。ただ、メンバーの高齢化、若い世代の参加等の課題があり、より一層様々の関係機関や組織との協力・連携の仕組みが模索されている。研究成果は、多面的な評価を質的・量的に蓄積できるものとなっており、成果報告の機会を多面的に組み合わせて予定することが望まれている
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の課題としては、宮古市における複数回の研修、仮設住宅・復興住宅におけるもやいの会メンバーによる回想グループの自主活動への支援とスーパービジョン、学生との世代間交流の機会、大規模な思い出パートナーの会を順に実施する予定である。6月の研修会では、物忘れカフェの紹介・報告について東京の目黒で積極的に実施している方の講演を行い、認知症高齢者の地域における支援の展開と回想法の活動の取組を促進する。岩手県の他地域における物忘れカフェの担当関係者も参加の予定であり、成果が期待される。また、講演前の午前の部で、三陸思い出パートナープロジェクトの現在までの経過と成果についてまとめの報告を行うこととしている。 関係機関との連携に加えて、若い世代の参加が望まれており、関係大学や専門学校、社協の協力等を図っていく予定である。平成30年度は、復興住宅居住の高齢者の参加が昨年度に比較して増加が予測されており、独居や高齢者世帯の閉じこもりを防ぐことにも一層力点を置く。成果報告に関しては、学会報告とともに、各研究担当者が論文執筆を蓄積し、最終年度である来年のまとめのために調整していく。
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Causes of Carryover |
理由)外部の識者の招聘により、震災で津波の被害にあわれた方たちを含めて、地域の高齢者へのアートセラピーを実施した。そのプログラムの実施に当たっては、前年度の未使用の経費を活用した。学会報告に関して4本の報告を行ったがそのための旅費において、参加者の人数等で予定より減額が生じた。また、主担当者の旅費に関して、別途調整可能な状況もあり、その結果次年度使用額が生じた。 使用計画)30年度には、物忘れカフェ等、認知症高齢者を地域で支える仕組みづくりと連携していく予定であり、思い出パートナーの広がりを踏まえた活動を実施する。そのために地域外部識者の講演の経費等が使用予定となっている。様々の研修を実施する場所の経費について公民館、公共の会場等を適宜使用できているが、会場の都合によっては会場費の増額も予定される。研修の効果評価に関して、多面的な評価をさらに精査していく予定で、そのためのデータ分析等の経費の増額が必要とされる。
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Research Products
(4 results)