2018 Fiscal Year Research-status Report
三陸思い出パートナープロジェクトの実際と多面的効果
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16K04214
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
野村 豊子 日本福祉大学, スーパービジョン研究センター, 研究フェロー (70305275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊波 和恵 東京富士大学, 経営学部, 教授 (90296294)
野崎 瑞樹 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (90322429)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 思い出パートナープロジェクト / 回想法 / 高齢者ボランティア / 地域住民 / 震災復興支援 / 世代間交流 / 連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
三陸思い出パートナープロジェクトの展開を以下のように実施した。 ①岩手県宮古市において5月22日にボランティアに対するグループ回想法のスーパービジョンを行った。②6月3日午前と午後に宮古市内公民館において研修会を行った。午前中ではこれまでの調査結果の説明と学会報告の成果を平易に伝達し、相互の信頼関係を更に気づくことに務めた。午後には東京で認知症カフェを実践されているT氏の講演を開催し、宮古市に加えて近隣の市町村在住の認知症ケアに関心の深い方達の参加があり、熱心な質問が寄せられた。③9月6日午前中に住民による見守り活動に関する講話及びグループ回想法の基本についての研修を行った。午後には盛岡市の福祉専門学校学生20数名の参加により高齢者、学生、保健福祉関係者の世代間交流を含めた回想法グループを【運動会】をテーマとして展開し、若い世代に伝えることの大切さと楽しさが参加高齢者から語られ、学生からは高齢者観の変化や生きがいの在り方に関心が高く示されていた。④10月20日に思い出パートナーの会を仮設住宅・復興住宅居住高齢者30名を中心にもやいの会、学生、行政関係者計約60名の参加により実施し、ボランティアがグループリーダーを務め、開催への期待の大きさが示された。⑤12月3日もやいの会に地区の老人会から回想法の会について依頼があり、老人会の参加者20数名、もやいの会10名で思い出語りの会を行った。⑥1月28日個人回想法に加えて化粧療法の実践を行った。 研究成果に関しては、日本老年社会科学会において報告をポスターにより発表し、東京において研究グループ「語りと回想研究会」の場で経過とその都度のまとめを報告している。各研修会の事前打ち合わせを主に東京において複数回実施し、データの分析と検討を重ねてきた。2018年度は特に地域への展開の方法と各研修後の評価項目の再検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗はおおむね計画通りに順調に進展しているが、昨年度の変更点同様、津波の被害に遭われた高齢者の方々への訪問個人ライフレヴューについては、グループ回想に力点を置き、その中で語られる多様な思い出を中心とする取り組みに変更した。思い出語りの会に参加される復興住宅居住の高齢者ともやいの会のボランティアの方たちの自然に支え合う形が、昨年度に増して示されたようにも思われる。ボランティアの方達には聴き手としてライフヴューを伺う役割ではなく、自らの人生を振り返る機会とされたい意向が強く見られた。様々の重大な危機を重ね越えてきている方達であり、中には認知症の母親を介護する立場を重ねつつ、母親のライフレヴューを冊子にまとめ、自らの振り返りもともに行われているメンバーもおられた。個人ライフレヴューの研修を実施することの意義は高く、各自の振り返りをおだやかに進めながら、他者の回想の意味と重ね合わせ、相互に心を寄せ合い聴く文化が、醸成されつつある。 多様な研修・学生との世代間交流・地域の保健・福祉関係者との連携等については、各関係者の協力と積極的な参加の意向により、順調に展開しており、岩手県の近隣地域の保健・福祉関係者、関東からの参加者等広がりを見せている。地元の老人会からの要請等があったが、より一層様々の関係機関や組織との協力・連携の仕組みの検討の必要性があり、2019年度に向けての重要な課題となる。 研究成果は、多面的な評価を質的・量的に蓄積できるものとなっており、成果報告の機会を多面的に組み合わせて検討・考察することが望まれている
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の課題としては、宮古市における複数回の研修、仮設住宅・復興住宅におけるもやいの会メンバーによる回想グループの自主活動への支援とスーパービジョン、学生との世代間交流の機会、大規模な思い出パートナーの会を順に実施する予定である。更に、宮古市の近隣市町村に加えて三陸地域のケアマネージャーから回想法の研修会が期待されており、日程について検討をし、実施することとしている。三陸地域の保健・医療・福祉専門職の関心を互いにつないでいく方策とともに、その経過や進捗状況、意識の変化等に関して、個人・グループに対するインタヴュー及び研修参加者への質問紙調査を含める予定である。 もやいの会の活動が地元で周知され、また、従来の地区以外の復興住宅居住の高齢者の参加の増加も予測されており、独居や高齢者世帯の閉じこもりを防ぐことにも一層力点を置くことが必要となる。もやいの会が独自で複数回行う従来の地区以外での復興住宅における回想グループにオブザーバーとして参加し、地域による参加者の異なった課題や状況を踏まえ、思い出パートナープログラムの現状と今後の課題に対する考察を深める。 もやいの会結成以来のメンバーの方達に対して、活動への意識の変化、震災後の思い出語りの会の実際に関する評価や参加高齢者の方達との関係性、今後への期待等に関して個人面接を実施し、その語りの分析を最終年度の結果評価に含む。 成果報告に関しては、最終年度であり、老年社会科学会学会における報告とともに、各研究担当者が論文執筆を蓄積する。複数回の研修会の内容をミニシンポジウムの形態に変えて、もやいの会のメンバー、広汎な参加者(宮古市、近隣地区、三陸地域を含め岩手県・東北地方各県等)に本研究の成果を報告する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画に含まれていた訪問個人ライフレヴューを研究の見直しにより、グループ回想の複数回の実施に変更したため、次年度使用額が生じた。次年度は、研究分担者の旅費の変更及び研究協力者への謝金の追加を予定している。また、もやいの会結成以来のメンバーである80歳代の方々への個人面接を実施する予定が加わり、そのための旅費、研究協力者への謝金が計上されることとなっている。更に、当初の計画に含まれていなかった三陸地域のケアマネージャーや保健・医療・福祉関係者等の専門職に対する回想法の研修を広範に実施する機会、及びもやいの会の活動成果を共有する機会を設定することができることになった。これらの機会を通して、包括ケアを担う専門職に対して、個人・グループ対象のインタヴュー及び研修成果の地域全体への反映に関する質問紙調査を加えることとした。そのための諸経費が計上されている。
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Research Products
(1 results)