2019 Fiscal Year Research-status Report
三陸思い出パートナープロジェクトの実際と多面的効果
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16K04214
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
野村 豊子 日本福祉大学, スーパービジョン研究センター, 研究フェロー (70305275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊波 和恵 東京富士大学, 経営学部, 教授(移行) (90296294)
野崎 瑞樹 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (90322429)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 回想法 / 思い出パートナー / 地域在住高齢者 / 東日本大震災 / 高齢者ボランテイア / 社会参加 / 介護予防 / 世代間交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3点に渡り、研究を継続した。 ①宮古市においてM会高齢者ボランティア、福祉関係専門職および福祉系学生に対して計3回の「思い出パートナー研修」を実施し、累計でボランティアメンバー21名、専門職71名、学生18名の参加であった。研修テーマは回想法グループ実践、学生との世代間交流実践、専門職への回想法概要・応用研修と参加者のニーズ別に行い、各回の事前事後評価を蓄積した。ボランティアメンバーの参加者の内、新規に入会したメンバーに対しての基礎的理解の研修では、回想法やボランティアi活動への高い意欲が顕著である点・他の社会活動においてリーダー的な役割の方が増加した点が特筆された。専門職への研修は三陸広域地域のケアマネージャーに対して実施し、継続研修への希望が多数寄せられた。 ②80歳代のメンバー3名に対する個別インタビューを人生における回想法の意味づけ、人生経験と回想法との結びつき等に沿って伺い、震災以前より活動継続しているメンバーの特質と現状を質的に探索した。メンバー自身のライフレヴュー、M会の活動、家族の変化、被災体験の振り返りを含めた地域の歴史等が豊かに丁寧に語られていた。 ③日本老年社会科学会第61回大会において「三陸思い出パートナープロジェクトの実際と多面的効果」に関し、2題の学会報告を行った。「中心的活動メンバーの事例分析による活動意向の考察」においては、年代・加入時期の影響や個人差はあるが回想法の手法・活動メンバー・研究チームとの関わり・居住地域の課題等が、個人やM会の活動継続に多様な刺激になっていることが示唆された。また「中心メンバーの地域活動状況ならびに生活史上の背景」においては、元々社会的な活動意欲が高く、地域の人的ネットワークの豊富な点が明確になった。職歴と地域の資源を活かした活動に、M会を通じて新たな学びを得ながら複数の活動を展開している現状が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終年度の予定であったが、主研究者の疾病・入院により前半の数カ月に研究実査地である宮古市・周辺諸地域での研修等が制限された。更に、後半で東北地方の台風被害の影響により計画の変更を余儀なくされた。このような状況の中で、宮古市でのプロジェクトの内容を変更して実施し、研修会の回数も削減した。加えて、2020年1月以降の新コロナ感染の状況の中で、三陸地域での研修と実査を行うことが困難となった。 しかしながら、研究の進捗では、専門職への研修を通して三陸地域の広域な範域で実施することが可能となり、思い出パートナープロジェクトの多面的な評価にその成果を反映できると期待される。 研究期間を1年延長することが認められたことにより、研究課題がやや遅れている状況を修正し、補足等を加えながら総合的評価をまとめたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度でありまとめと総合的評価を中心に、以下の具体的な方策を遂行する。 ①日本福祉教育・ボランティア学習学会機関誌に「地域活動の継続に関する個人及びグループ要因からの検討―三陸思い出パートナー中心メンバーの分析ー」の表題で投稿。既に査読結果で掲載可となっており、近日中に掲載となる。②日本老年社会学会学会誌に、論壇投稿として「回想法・ライフレヴュー研究再考―源流から現段階における多面的展開へ」の表題で投稿し2020年秋に刊行予定。③中央法規出版から「回想法とライフレヴューー時・人・地域をつなぐ」の表題で書籍を2021年3月に刊行予定。④老年社会科学会大会において「思い出パートナープロジェクトの実際と多面的効果(その6)-長期に活動するメンバーの個人要因に関する分析」と題し、報告の予定。 最終報告書では、研修内容・研修報告、M会回想法・思い出パートナーにおけるコミュニティ意識に関する分析、M会世代間意識(自由記述・グループインタビュー)に関する分析、個別インタビュー(生活史)分析、参加高齢者及び参加学生の意識や意向の変化等に関する分析、三陸地域ケアマネージャーの参加データに関する分析等の結果を考察し、本プロジェクトの総括的評価を記述する予定である。 本研究では、毎年、災害復興住宅居住高齢者、M会メンバー及び専門職者による70人規模の回想法を実施してきた。また、最終年度には合わせて総括的なシンポジウムを開催する計画ではあったが、諸状況により小規模の会と刊行物による評価のフィードバックに適宜変えていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたことに関しては、主研究者の疾病による入院とその予後の経過の中で、長距離の出張が一定期間困難であった事情による。また、度重なる東北地方の台風被害等により研究実施地において、ボランティアの方達に対する研修会の開催の予定を変更することや、三陸地域のケアマネージャーの方々への回想法研修の内容変更を余儀なくされた。更に、新コロナ感染が拡大する状況により面接調査や研修会を実施することが困難になった。 補助事業の1年延長の元に、蓄積した研究データの分析の精査と考察、補足的な実地調査を行い、総括的評価のための研究打ち合わせ等を行う計画である。また、研究成果のフィードバックに関しては、諸事情に適宜応じながら調査地における小規模な研究会の実施や刊行物による方策を計画している。最終的には、研究のまとめと総括的評価の成果としての書籍・報告書作成を行う。
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Research Products
(2 results)