2016 Fiscal Year Research-status Report
デジタル図書によるトランスナショナルな外国人児童学習支援ネットワーク構築の研 究
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16K04218
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小澤 亘 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30268148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清田 淳子 立命館大学, 文学部, 教授 (30401582)
金森 裕治 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30362742)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ICT学習支援 / 外国にルーツを持つ児童 / 読み困難度のアセスメント / 自尊感情測定 / 視線追尾検査 / 多言語デジタル図書 / DAISY |
Outline of Annual Research Achievements |
外国にルーツを持つ児童に対するICTを活用した学習支援を開始し、支援方法を模索した。具体的には、大阪市立小学校2校と京都市立小学校1校の協力校をフィールドとして10名の外国人児童(中国人4名、フィリピン人5名、トルコ人1名)に対して、iPadを使って、放課後個別学習支援(1対1の支援を基本し、週1回の頻度)を、2016年10月より開始した。読み能力評価に当たっては、レーブン色彩マトリックス検査・STRAWを実施した。また、東京都様式の自尊感情測定調査(対象生徒と担任)を実施した。これと並行して、フィリピン児童1人に対して、留学生院生による母語(英語)による対人的学習支援を試みた。iPadは、各児童1台を用意して、それぞれの児童に適した学習支援を模索した。また、PDFに音声を載せる方法での試験音声化にも挑戦し、読み困難な日本人児童(1名)の試行的な支援を試みた。 外国にルーツを持つ児童の「読み困難度」の把握については、視線追尾検査によって行うこととした。上記支援児童を含む12名の外国人児童と13名の読み困難な症状を呈する日本人児童、成人ディスレクシア1名に対して、2017年2月に視線追尾検査を実施した。各生徒に対して、初見の日本語の例文(該当学年から小学1年生レベル)を音読してもらうことにより、音声データと視線追尾データを取得した。さらに、ATLAN(語彙能力・語用力検査)を加えていくことにより、研究分担者の金森裕治教授が別プロジェクトにて、およそ50名(一般日本人児童および読み困難な症例を持つ日本人児童)に対して実施した視線追尾検査データ(2016年12月実施)を活用することによって、詳細な比較分析を実施していく。これらの結果については、2017年6月~8月にかけて、各学校の教員研修会にフィードバックしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪市立A小学校の特別支援担当教諭が経年的に取ってきた、全校生徒にたいする森田愛媛式データの利用は、結局、特別支援担当教諭から最終的な合意が得られず、活用が不可能となった。そこで、研究分担者の金森裕治教授らのグループが実施した視線追尾検査データ(読み困難な日本児童および通常児童約50名分)に注目し、外国にルーツを持つ児童に対しても、同様な検査を実施することとした(これは日本で初めての試みとなる)。これらのデータの比較分析により、外国にルーツを持つ児童の読み困難な状況を、ディスレクシア児童のケースと比較分析していく。これにより、外国にルーツを持つ児童が、障害児童と同等な困難に直面していることを実証することを目指す。 今後、対象児童に対する視線追尾検査を2年間(1年に1回の頻度)にわたり実施していくことにより、支援対象児童の読み能力の変化の経緯をアセスメントしていくこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在入っている3つの小学校をフィールドとして、ICTを活用して、外国にルーツを持つ児童に対する学習支援体制の確立、ならびに、学習支援方法の具体化の模索を継続する。小学校側の同意を得て、さらに、試験の音声化についても、外国にルーツを持つ児童に対する効果を確認する。 生徒の読み能力評価においては、レーブン色彩マトリックス検査およびSTRAW、東京都様式の自尊感情測定調査、視線追尾検査、ATLAN(語彙能力検査・語用力検査)を継続実施していく。さらに、支援生徒の生活環境などについても調査していく。 2016年度末に実施した視線追尾検査データについては、金森裕治教授の日本人児童データと比較分析を加え、その結果を協力校の教員研修会でフィードバックする他、関連学会等でも報告することを目指す。 従来、Dolphin-Publisherを使用して、多言語デジタル図書を制作してきたが、さらに、Plex-Talk-Producerを使用して、多言語デジタル図書制作を試みる。こうした技術を基盤として、ブラジルの日本語センターやサンパウロ大学およびカエルプロジェクトなどと連携した、デジタル図書による帰国児童の支援について体制構築を推進する。
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Causes of Carryover |
支援対象者に対して使用を予定していた多言語DAISY図書の開発が若干遅れているため、また、当初予定していた外部講師によるDAISY図書制作講習会を内部人員が講師を務めて実施したために、人件費・謝礼が予定より少額に留まっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度より、多言語DAISY図書の制作を本格化する。また、外部講師によるワークショップも実施する。2017年9月にブラジルへの海外出張を予定しているが、これらに使用する。
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