2017 Fiscal Year Research-status Report
大学におけるインペアメント文化を尊重する合理的配慮マニュアル作成に関する研究
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16K04224
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松岡 克尚 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (90289330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横須賀 俊司 県立広島大学, 保健福祉学部(広島キャンパス), 准教授 (60304193) [Withdrawn]
原 順子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (60309359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インペアメント文化 / 障害者文化 / 障害文化 / ろう文化 / 障害学生支援 / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研メンバーによる研究会を2回開催し、本研究の理論的根拠となる「インペアメント文化」の定義を確定すべく協議を行った。また、特に「ろう文化」に焦点を絞り、それとインペアメント文化との関連性についても意見交換を行った。 その結果、前者については、松岡克尚(2018)「インペアメント文化のとらえ方とその可視化―障害文化、障害者文化との比較を通して」としてその成果を公表することができた。そこでは、インペアメント文化を、インペアメントを有する身体がその取り巻く環境との関わりによって必然的に生じる特有の生活習慣やルールである、として定義づけるに至った。この定義に従えば、インペアメントの種類毎にインペアメント文化は区分されなければならないことになる。一方、障害者全体をカバーするものとして位置づけられた障害文化はその点でインペアメント文化との相違が見られること、更には障害者文化といった場合は、純粋に身体性に依存するインペアメント文化に加える形で、排除、差別体験の要素がそこに加味されて形成されたものであることを指摘し、それぞれとインペアメント文化との違いを強調した。 後者の課題については、原順子(2018)「聴覚障害者に対する障害認識についての調査分析―手話通訳者を対象とした調査結果をもとに―」にまとめることができた。手話通訳者を対象としたインタビュー調査結果をもとにして、インペアメント文化とろう文化への認識状況を探る試みを行った。 上記のインペアメント文化の定義を踏まえ、障害学生へのインタビュー調査を行い、大学生活を軸にしたインペアメント文化の抽出作業を行った。計5大学14名の障害学生の協力を得て、それぞれの質的データを得ることができた。次年度は更なるインタビューの実施とそれらの分析を行い、インペアメント文化のアーカイブ化とそれを活かした障害学生支援のマニュアル作成を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究分担者である横須賀俊司氏が体調不良のために平成30年3月末で、研究分担者から外れることになった。結果として調査枠組みのチームとしての共有化や役割分担の確認が遅れ、インタビュー調査の開始にも遅延が生じた(横須賀氏は平成30年3月末で辞退)。その後、残る2名の研究者のみで改めて研究スキームの確認と役割分担とスケジュール設定を行なった。 ただ、当初想定していた期間より短く、かつ予定よりも多くの障害学生からインタビューの協力を得ることができたことでやや遅れた分を回収できた。ただし、本来であればそれらの分析作業も平成29年度内に完了させるべきところだったが間に合わず、以降の作業は次年度に持ち越しになってしまった。加えて、調査できた障害学生は量的には十分であっても、障害種別に偏りがあるために、例えば精神障害などの場合は実際に調査協力を得ることが困難である可能性はあるが、可能な限り次年度に於いて調査補充を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
障害種別の偏りを解消すべく、引き続き可能な限り障害学生を対象としたインタビューの追加調査を行う。そこから得られた質的データの分析を2名の研究者で進めていくが、その際に専門領域の研究者複数名からの助言を得て、インペアメント文化抽出結果の精度を高める工夫を行う。結果として取り出されたインペアメント文化の要素を、インペアメントの類型毎にアーカイブ化し、それらを障害学生支援の実際に活かせるようにしたマニュアルを作成する。 作成したマニュアルを、既に協力の同意を得ている6大学の障害学生支援担当者に送付し、そのスーパーバイズを受けて、内容の精緻化と改訂を行う。最終的に完成させたマニュアルやそれまでの研究成果を基にして、先の6大学の担当者を交えたシンポジウムを開催し、その参加者には成果物たるマニュアルを配布して、内容の周知と発信を図る。
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Causes of Carryover |
(理由) 旅費については、研究分担者の病気、リタイアのため当初予定していた会議開催、特に広島での会議が実施できなかったこと、広島での調査実施が不可能になったことに伴う支出減によることが大きい。物品費も先の理由に伴って書籍購入が少なかったことが影響した。人件費・旅費については、学生へのインタビュー謝礼に1名当たり時間に関係なく2000円に抑えたために、当初時給3000円で計上していたものから大幅に減少することになった。その他については、会議開催回数が予定より確保できず、それに伴う複写費や通信費の支出も少なかったことが大きい。 (使用計画) インタビュー調査結果の分析に、複数名より専門的知識の提供を受ける予定であり、その謝礼や、作成したマニュアルの検証作業に協力いただく大学の障害学生支援担当者への謝礼、およびシンポジウム開催に係る費用、マニュアル印刷配布に係る費用に充てる。
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Research Products
(2 results)