2017 Fiscal Year Research-status Report
中高年知的障害者と高齢の親の同居家族への相談支援:障害分野と高齢分野の有機的連携
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16K04230
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
植戸 貴子 神戸女子大学, 健康福祉学部, 教授 (20340929)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中高年知的障害者 / 親との同居 / 知的障害者の高齢化 / 親の高齢化 / 相談支援 / 障害と高齢の有機的連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的障害者及び親の高齢化に関する先行研究レビューを継続して実施した。その結果、中高年知的障害者と高齢の親の同居する家族の孤立、親によるケアの行き詰まり、知的障害本人が高齢の親を介護する「障老介護」などの課題が確認できた。 そして、関西圏の地域包括支援センター等の高齢分野の相談援助職を対象に、フォーカスグループインタビューを実施し、5名の相談援助職の協力を得て、①中高年知的障害者と高齢の親の同居家族への相談支援の現状と課題、②中高年知的障害者と高齢の親の同居家族への相談支援における障害者福祉と高齢者福祉の協力・連携の現状と課題について聴き取った。 調査協力者の語りを「質的データ分析法」を用いて分析した結果、知的障害本人の病気や機能低下・職場や通所施設を辞めた後の長期に亘る在宅生活・生活リズムの乱れ・親に対する暴力などの課題、親の健康問題・二重介護・ネグレクト・経済的困窮・子のケアを他者に託すことについての気持ちの揺れなどの課題、近隣の理解や協力が得にくい、サービス事業所が親子の将来を見据えた支援ができていない、などの課題があることが浮き彫りとなった。 また調査協力者は、親に対する相談支援のみならず、知的障害の子に対する働きかけやサービスの導入、親子のサービスの調整、病院・行政・民生委員などとの連絡調整を行っていた。さらに、障害分野と高齢分野の制度の壁や、両分野の相談援助職の視点の違いといった困難を感じており、両分野の相談援助職の相互理解や、親子の将来に向けた早い段階からの準備の必要性を痛感していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究のテーマである中高年知的障害者と高齢の親の同居家族の実態や課題に関する先行研究を継続的に行い、考察を深めることができた。また、予定していた地域包括支援センター・居宅介護支援事業所の相談援助職への聞き取り調査を実施し、結果の分析を進めることができた。 一方で、障害者相談支援事業所や地域包括支援センターの相談援助職を対象としたアンケート調査に関しては、準備段階にとどまり、実施には至らなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、障害者相談支援事業所の相談支援従事者や地域包括支援センター等の高齢分野の相談援助職者を対象にアンケート調査を実施する。調査の目的は、中高年知的障害者と高齢の親の同居家族にどのような生活課題が生じているのか、親子に対してどのような相談支援を実施しているのか、さらには知的障害分野と高齢分野がどのように連携・協働しているのか、連携や協働にどのような課題があるのかなどを、知的障害分野と高齢分野の双方の視点から明らかにすることである。 そして調査結果を分析することによって、親子の生活課題を解決し、さらには知的障害者が親によるケアに依存することなく、また施設に入所することなく、地域生活を安定的に継続させるための相談支援のあり方、障害分野と高齢分野の有機的かつ効果的な連携・協働のあり方を明らかにする。 さらにその分析結果を踏まえて、中高年知的障害者と高齢の親の同居家族に対する相談支援に際して、障害分野と高齢分野のそれぞれの相談援助職が用いることのできる実践ガイドを作成する。 最終的には、実践ガイドを含めた研究報告書を作成し、障害者相談支援事業所や地域包括支援センターなどに配布して、中高年知的障害者と高齢の親の同居家族に対する支援や、障害分野と高齢分野の連携・協働のあり方についての啓発を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度に予定していた、障害者相談支援事業所や地域包括支援センターの相談援助職を対象としたアンケート調査を実施することができなかったため、それにかかる印刷費・郵送費などが発生しなかった。 (使用計画) 障害者相談支援事業所や地域包括支援センターの相談援助職を対象としたアンケート調査の印刷費・郵送費などを支出する。また、研究報告書を作成するための印刷製本費、障害者相談支援事業所や地域包括支援センター等への配布に係る郵送費などを支出する。
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