2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04272
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
宮本 聡介 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60292504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太幡 直也 愛知学院大学, 総合政策学部, 准教授 (00553786)
児玉 さやか (菅さやか) 愛知学院大学, 教養部, 講師 (30584403)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 説明バイアス / キャラクター / ステレオタイプ / 心の所在 / 高社会性文脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
説明行為を通して説明対象に対する認知が歪むことを”説明バイアス”という(Koehler, 1991; 宮本・菅・太幡,2015)。本研究の目的は 1.社会性の高い文脈において、説明行為に伴うバイアスを観察し、そのメカニズムを明らかにすること,2.説明バイアスの発生諸要因を認知レベルと社会レベルの双方から検討し、バイアスを抑制または解消する諸要因を検討することの2点である。 28年度は,説明バイアスが有効に働く社会的文脈を特定するための文献調査および実証的研究を行うことであった。文献研究については,各研究者の専門領域において文献整理作業を行った。 実証的研究では説明バイアスが確認可能な実験方法と説明材料の検討を行った。28年度内に5つの実験,調査を行った。具体的には,架空のステレオタイプについて,その特徴を説明することが,当該ステレオタイプ信念に及ぼす影響を検証する実験(以下,ステレオタイプ実験),新規キャラクターの個性を説明することが,当該キャラクターの魅力度に与える影響を検証する実験(キャラクター実験),目撃証言場面において,証言(説明)が証言内容の実在性に与える影響を検証する実験(目撃証言実験),心はどこにあるかという問いに対して「頭」「胸(心臓周辺)」に心がある理由を説明させた後,実際に心はどちらにあるかを判断させた場合の説明の影響を検証する実験(心の所在実験),大学の魅力を説明することが,当該大学に対する愛校心を高めるかどうかに関する実験(愛校心実験)であった。 また,28年度中に2度の研究会を開催し,研究の進捗状況について分担研究者と意見交換を行った。うち1度は,本研究の近接領域で研究を行っている外部研究者への公開研究会とし,本研究に対する様々なコメントを頂戴した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記研究実績の概要において報告した5つの研究は,昨年度のうちに実験を全て終了し,分析を進めているところである。5つの実験のうち,4つの実験で分析を終え,ステレオタイプ実験,目撃証言実験では説明バイアスの影響が確認できなかったものの,キャラクター実験,心の所在実験において説明バイアスが確認された。しかし,キャラクター実験や心の所在実験に用いられた説明のテーマは,ステレオタイプや目撃証言などのテーマに比べると社会的文脈にやや乏しい話題であると考えている。ステレオタイプ情報などを用いた,社会性の高い文脈での説明バイアス効果の確認が急務であると考える。 愛校心実験は,当該年度内(28年度)内に分析が終わらず,年度をまたいで分析中である。研究代表者が28年度より所属校で役職者となり,学内業務に追われていることが挙げられる。しかし1年経過したので仕事効率も上がり,研究に割く時間を以前よりも増やせると考えている。 今後の研究推進方策でも概説するが,29年度以降は説明バイアスの抑制の可能性についても視野に入れて研究を進める必要がある。そのためには確実に説明バイアスが観察できる実験手続きを特定することが求められる。その意味では,28年度中にそれを特定することができなかったこととなり,研究全体の進捗状況としては「やや遅れいている」と報告せざるを得ないと考える。29年度以降,早急に安定して観察可能な説明バイアス実験の手続きを確定する必要がある。 また,これまでに実施した説明バイアス実験において,従属変数として用いた指標は,全てが顕在指標である。しかし,文献等を精査すると,潜在指標での説明バイアスの影響を測定することも,社会心理学的意義があると考える。29年度以降,新しい視点として潜在指標を検討することも念頭に,研究を進めてゆく。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,前年度に引き続き、先行研究の精査を行ってゆく。ただし、研究活動全体の比重としては、以下の実証研究に重きを置く。 当初の予定では,説明バイアスの緩和・抑制を可能にする要因を検討してゆくことが29年度の主たる目的であった。そのためには,説明バイアス現象を安定して観察できる実験手続きを特定する必要がある。28年度に実施した5つの実験から,説明バイアス現象を示唆する結果は見出されているが,安定した結果を確認するには至っていない。そのため,29年度は,説明バイアス現象を確認できる実験手続きの精査を引き続き行ってゆく。 なお,28年度に実施した5つの実験で従属変数に使用した変数は,全て自己報告式によるいわゆる"顕在指標"であった。一方,先行研究などを検討すると,社会心理学の多くの実験で潜在指標を測定することが主流になっていることから,本研究でも顕在指標と同時に潜在指標を測定することを計画している。これにより,今までよりも多くの観測変数によって説明バイアス効果を観察することが出来るので,安定した測定指標を見出す活路になると考えられる。 説明バイアスを安定して観察できる実験手続きの特定を,年度内に早期に行い,本研究の2つ目の目的である説明バイアスの抑制のテーマに取りかかる予定である。説明バイアス抑制にかかわる手続きとして,多重説明課題,無関連説明課題,説明バイアス現象の告知他,様々な手続きが考えられるが,その中から社会的に有用な手法を精査し,実験に組み込んでゆく予定である。 また,前年度と同様に,年2回のペースで研究会を開催し、プロジェクトメンバー間の情報共有を深める。さらに,28年度の実験結果等を学会、研究会等で順次報告してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
28年度予算1,820,000円に対し,当該年度消化額は1,526,342円,未使用額が293,658円となっている。比較的大きな未使用額が生じたのは,物品費(当初予算計1,050,000円,使用額901,877円,未使用額148,123円)と旅費(当初予算計200,000円,使用額66,680円,未使用額133,320円)であった。物品費については,当初見積もりよりも安価に購入できたものがあったこと,購入の必要がなくなった物品があること(例えば統計解析用ソフト等は分担研究者において購入の必要がなくなった)が未使用金の理由としてあげられる。また旅費については,当初予定していた学会参加が,実験成果等を充分に確認できなかった理由から報告を見合わせたことが理由に挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に繰越された残額293,658円の3割程度が,分担研究者による未使用額である。これについては,分担研究者と相談し,当初,29年度に予定していた分担者の分担金に,未消費額分を増額することとした。28年度は,学会等への報告材料が乏しかったため,学会参加を見送った分,旅費の未使用金があったが,29年度は実験結果等の整理も進み,報告材料が増えている。複数回の学会報告等の機会が求められる可能性もあり,28年度からの繰越金を29年度の旅費に充てることが適切であると考える。 また潜在指標等を測定するための実験ソフトウエアを購入するなど,当初の予定にはなかった物品の購入を予定している。こうした物品の購入が必要であることから,前年度の繰越金をここに充てる予定である。
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Research Products
(1 results)