2017 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム生理指標モニタリングを用いた新たな家族療法開発の試み
Project/Area Number |
16K04350
|
Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
村松 朋子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (20633118)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 生理指標リアルタイム測定 / 家族療法 / 家族アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
目的)申請者はこれまで、家族療法の枠組みを用いて、摂食障害患者の治療における家族支援の有効性を検討してきたが、多くの患者は家族内の葛藤を治療者や家族の前で語ることを避ける傾向にあり、そのことが治療の長期化の一因となっていると考えている。そこで申請者は、家族療法中に患者の生理指標測定を行い、これを家族療法に組み込むことで、患者が葛藤を『気づき』それを言語化する補助にできるのではないかと考えた。 研究方法)家族療法開始前後に、家族機能評価などの心理検査を行い、2群の家族療法の効果を評価する。リアルタイム生理指標モニタリング群の家族療法中は、摂食障害患者がバイタルセンサーを装着し、心拍と皮膚コンダクタンスを測定する。家族療法中の様子は、ビデオカメラで記録し、両センサー値と動画ビデオの時間を同調させ、関連している部分の葛藤の性質、やりとりのパターン分析を行ったデータを用いて家族療法において介入を行った。 家族療法中に葛藤場面に遭遇するまさに、その時の患者の生理指標をリアルタイムモニタリングし、その際に現れる心拍数や皮膚コンダクタンスの変化を患者と家族に知覚してもらい、それを新たな『気づき』につなげる。さらにその生理指標の変化を家族内で話すことで葛藤の言語化を即すことにつながった。 実施状況)家族療法中に、言語表表出・表情表出の乏しいクライアントの生理指標をリアルタイムで測定した。明らかに体が反応している「心の状態を可視化」したデータは、家族にとっても本人にとっても大変説得力のあるものとなった。 当該年度では、ビデオ映像分析とバイオモニタによる生理指標データの解析を行った。データ分析の結果、クライエントや家族が抱えている問題を安全かつ円滑に対処する方法をデータが示し、そのデータを家族で共有することで、安全かつ円滑に問題を顕在化させることが明確化された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の所属の異動に伴い、研究協力対象者のリクルートを外部医療機関に依頼することとなった。各医療機関の倫理審査に多くの時間を要したため、新たなデータの取得に至らなかった。 しかしながら、すでに取得済みのデータ解析は計画通りに進んでいる。 生理指標をリアルタイムで正確に測定する技術とデータ解析方法は、新たな研究協力者の協力を得る体制が整ったことは、今後の研究推進のための大きな弾みとなった。 本研究の発想の原点となった先行研究は、香港大学のLee博士の研究であるが、昨年10月にそのLee博士とデータ分析に関するディスカッションを行った。また、生理指標モニタリング測定技術に関して、香川大学の神原教授の協力を得ることができた。新たなデータ収集に関しては進めることができなかったが、より精緻なデータの収集方法とデータ解析方法については前進させることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の異動に伴い、研究のフィールドの変更を余儀なくされた。 それにより、研究対象者を摂食障害者のみに限定することが困難となったため、対象者を摂食障害に加えて社交不安障害、適応障害にも広げた。新たな研究フィールドの獲得と研究協力者を迎え、新しい研究体制を整えることができた。 このリアルタイム生理指標による『気づき』と言語化のプロセスは、摂食障害だけでなく他の疾患に対しても応用できると考えられ、新しい心理療法のコンセプトを作り出す可能性がある。また多くの心理療法では、この『気づき』と言語化プロセスに到達するまでに多大な時間を要するが、そこに数値化された客観的データを用いることで、心理療法にかかる時間の短縮化に繋がり、患者の精神的、物理的負担が軽減されるだろう。 生理指標測定については、センサーの装着に関して、新たな備品(使い捨ての装着テープ)を購入し、より信頼性の高いデータの収集に努める。
|
Causes of Carryover |
研究体制が変わったこと(研究協力者のリクルート先の変更)に伴い、各研究協力期間への倫理審査に時間を要したため、データの収集が計画通り進めることができなかった。 それに伴い、対象者への謝金、データ解析、ビデオ解析に関する支出がおさえられた。 今年度は、各研究協力機関の倫理審査委員会も全ての機関で終えたため、次年度はデータ収集を進めることができる予定である。さらには、解析した結果につき、国際大会で発表するだけでなく、国際誌への投稿を目指す。
|