2016 Fiscal Year Research-status Report
放射線災害下において母親の自己判断効力感を高める心理学的要因についての調査研究
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16K04377
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
佐々木 美恵 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (50458238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 あや 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00347212)
石井 佳世子 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 助手 (40336475)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 東日本大震災 / 精神的健康 / 自律的判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,研究の第Ⅰ段階として,放射線不安下において母親の自律的判断を高める要因について探索的に検討するため,聴き取り調査の準備を進めた。なお,ターゲットとする構成概念を再検討する中で,母親が放射線問題に対して自律的に判断することが重要であると考え,自己判断効力感に代えて自律的判断を用いることとした。代表者,分担者,その他研究協力者による検討の上,半構造化インタビューの項目を生成した。なお,母親の精神的健康の検討にあたり,母親の日常生活における身近な支援者である保育者に着目し,インタビュー項目に反映させた。調査協力者は,福島県中通り地方A市内の小児科クリニックを受診する母親から募ることとし,クリニックの施設代表者に調査協力を依頼した。協力依頼に際して,研究計画および研究倫理を口頭,書面にて説明し,施設代表者からの承諾書を得た。 第Ⅱ段階は,聴き取り調査の実施,分析,解釈であった。計20 名程度を見込み,クリニックの医師等職員を通じて,あるいは受付カウンターに設置し,募集書面を配布した。しかし,聴き取りの設定(改めて日時調整の上,同市内の他施設への来所が必要)が母親の承諾を得づらいものであったためか,調査協力者を得ることが困難であった。 そのため,研究計画を変更し,外来で記入可能な質問紙調査へと方法を変更した。改めて質問紙内容を代表者,分担者,その他研究協力者間で検討し,質問紙を作成した。クリニックの施設長の承諾書を改めて得て,調査実施の準備を整えた。平成29年3月中旬より調査を開始し,4月上旬に終了した。分析,解釈は平成29年度前半に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,研究の第Ⅰ段階として,放射線不安下において母親の自律的判断を高める要因について探索的に検討するため,聴き取り調査の準備・実施を進める予定であった。実際に,半構造化インタビューの質問項目作成,調査対象者選定条件の設定,調査協力者募集を依頼する協力施設(小児科クリニック)への依頼・承諾の手続きを進め,実施まで進めることができた。しかし,当初の計画通り,協力者の応募が得られなかった。この理由として,協力募集と聴き取りの実施場所が異なること,日時の調整が必要であったことが影響した可能性が考えられる。 研究計画の変更を行い,クリニック外来で回答が可能である質問紙調査へと方法を修正した。改めて質問紙の作成,施設の承諾を得て,自記式質問紙調査を実施した。質問紙の回収状況は非常によく,母親の現状を探索的に把握するための質的データを得る,という目的は達成することができた。 よって,一部研究計画の見直しは必要であったものの,研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成28年度に収集した質的データを分析し,東日本大震災および福島第一原発事故から約6年時点での放射線不安下で子育てをする母親の心理的状態を探索的に検討する。 結果に基づき,量的仮説検証研究の計画を策定し,平成29年度中に調査を実施する予定である。調査対象者の選定基準は,(1)福島第一原発事故後,初期の段階で乳幼児を育てていた群(平成28年度質的調査と同一基準),(2)代表者を含む研究チームが事故後約3年時点で実施した群(未就学幼児を育てていた母親)と同一コホート群,とする。(2)については,前回調査時に氏名,住所等の個人情報を得ていないことから同一対象者を得ることはできないが,同一地域の同一コホート群からデータを得ることで,縦断的検討を行う。 さらに平成29年度は,平成28年度に実施した質的データの分析結果について,学会発表等による成果発表を進める予定である。
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Causes of Carryover |
概ね順調に支出し,研究を進めている。次年度使用額は端数の範囲である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では,研究使用消耗品を購入し,支出する予定である。
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Research Products
(5 results)