2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04467
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
和田 正法 三重大学, 教養教育機構, 講師 (10724990)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大学昇格 / 東京工業大学の歴史 / 東京高等工業学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大正・昭和初期に高等工業学校が大学昇格する過程を検討することにより、工業学校の意義を歴史的に明らかにすることを目的とする。技術史と教育史にまたがるこのテーマでは、西欧移入の最先端である大学(高等教育)が主な研究対象になっており、中等教育の役割は検討されてこなかった。とくに20世紀初頭の高等工業学校は、大学に昇格する前史と位置づけられるばかりで、日本の工業発展への役割が正当に評価されていない。中等教育に焦点を当てることで、当時の工業学校の社会的評価とともに、教育の工業化への実質的な貢献の解明を目指す。 東京高等工業学校(東京工業大学)の歴史は、先駆的な学校として典型的事例を示すと考えられるため、まず東京工業大学の歴史解明に着手した。初年度は、とくに1929年に東京工業大学への昇格を果たした東京高等工業学校の大学昇格運動に着目し、学校内外の反応を精査することで、当時の工業学校に対する日本人の認識を復元することを試みた。すなわち、東京高等工業学校時代の関係者の手記や回想録を収集し、分析する作業を行った。また、明治から昭和期の工業教育を対象とする研究者への聞き取り調査を行い、工業教育のなかでも、分野によって大学昇格への動機と社会的要求が異なることの示唆を得た。これは、従来の、沿革の記述を中心とした研究によっては得られない視点であり、高等教育史に、科学技術史の視点を導入することで、新たな知見が得られることが分かった。 当時の工業学校の状況を知るには、教育の国家政策や、工業関連団体の動きを把握しておく必要があり、そのための文献を手広く収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り作業が進んでいるものの、計画通りに進行していない。初年度の作業内容をもとに、2年目である2017年度にはその成果を公表し始めることを当初の予定としていたが、本報告執筆時点では実施が遅れている。東京高等工業学校(東京工業大学)の分析に一応のめどをたて、大阪や名古屋、熊本等の資料収集を開始する予定であったが、諸高等工業学校の調査について着手できていない。それというのも、東京工業大学の資料として、一般には入手しにくい資料が存在することが判明したためであり、手続きを経て東京工業大学の歴史に関する資料の調査を拡大する必要がある。また、研究対象に関する聞き取りと資料入手の手はずの依頼を予定・期待していた研究者の急逝があったことも、作業に困難をきたしたことの遠因である。以上の理由から、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画から、対象を絞り、東京高等工業学校(東京工業大学)の資料調査を完了することを最優先事項とする。遅れが生じている全国の高等工業学校の資料収集を同時並行で作業を進めながら、図書館・資料館等の協力を得て、現地調査の必要性を判断する。
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Causes of Carryover |
物品・図書の購入については、概ね、予定通りの支出を行った。海外旅費を想定していたが、資料調査に集中する必要性が新たに判明したため、そちらの作業を優先し、海外調査を実施しなかった。国内旅費についても、6回分の旅費を想定していたが、研究対象に関する聞き取りと資料入手の手はずの依頼を予定していた研究者の急逝があったため、出張回数が減り、かつそれぞれが短縮されるといったことが重なり、予定通りの支出をしなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書については、多くの関連書籍が附属図書館で入手できる一方で、図書館にも所蔵されておらず、新刊が入手できないものは古書として入手する必要が多いことも判明した。そのため、図書の購入費を当初の予定よりも拡大する。
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