2017 Fiscal Year Research-status Report
体験と思考をつなぐ「生活を通した学習」モデルの構築―社会的協働学習実践の国際比較
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16K04588
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会的協働学習 / 創造性 / アート教育 / 学校ー家庭ー地域の連携 / 体験 / 知性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の2年目にあたる平成29年度は、初年度の文献調査の結果に基づき、フィールド調査及びインタビュー調査を実施した。5月に実施した岡山県倉敷市での美術館調査では、美術館における地域に開かれた教育プログラムの沿革、課題、コアとなる教育的概念等について知見を得ることが出来た。また、本調査結果をボローニャ市の子ども図書館の実践(地域における子どもへの教育プログラムの提供、またそこにおける連携の形)、アンテロス美術館との実践(感覚を通しての知の育成の実践)と比較分析を進めることによって、学校ー地域ー家庭の連携に基づく「生活を通した学習」がもたらす教育的効果の実践モデルを構築する手がかりを得た。これらの調査を通して、「学校と学校以外の教育リソースとの連携」の特徴の一部を明らかにすることができた。また、「社会的協働学習実践」の理念面と設置・運営との関係性及び課題について、分析を進めた。 加えて、岩手県盛岡市、宮城県仙台市、兵庫県神戸市等で調査及び研究会を行い、成果の一部を発表・共有するとともに、上記の概念分析を進めた。国際比較の面では、2017年12月にPhilosophy of Education Society of Australasiaに参加し、特にアジア、オーストラリア地域における実践知・協働学習等の情報収集を行った。 以上の成果の一部については、各研究会での発表を行ったことに加え、学会誌及び、編著書である『ワークで学ぶ教育課程論』(尾崎博美・井藤元編、井谷信彦、室井麗子他著、ナカニシヤ出版)の中で発表している。また、2017年9月に刊行された『教育思想事典 増補改訂版』の担当項目(「ケア」「ホーム」「シンボル」)についても、本科研の成果の一部を援用している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研の2年目に当たる平成29年度は、フィールド調査及び成果の一部の発表を計画としていた。実際に、フィールド調査として複数の施設を訪れることができ、またインタビュー調査を通して、当該の実践に対する歴史的、概念的な分析を取り入れることができた。加えて、科研の初年度である平成28年度だけでなく、本科研の前段階の研究となる科研課題「学校ー家庭ー地域の連携」に基づく協同的学習という点からも新たな知見が得られたことは、研究の連続性・発展性の点からも収穫であった。 成果発表は、文献において成果の一部をまとめることができ、当初の予定を達成することができた。 以上の理由により、本科研における進捗は、当初の研究計画に基づき、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研の最終年度にあたる平成30年度は、フィールド調査・インタビュー調査をさらに続けると共に、これまでの文献調査及び実践分析の結果をまとめ、「社会的協働学習」のモデル化、また「生活を通しての学習」によって得られる「知」の形について、具体的な提案を構築することを目指す。 特に、体験と思考をつなぐ生活知・実践知の体系の分析、当該の「知」の育成を実現するための条件等の考察、当該の実践において主たる役割を果たす教育エージェントの働き、特徴、及び課題等を、現在の教育状況や課題を踏まえた上で、具体化することを目指す。 成果については、日本教育学会、教育哲学会、日本教師学学会等の国内学会に加えて、国際学会等での発表も視野に入れる。最終的な報告書の作成に当たっては、実践分析と理論構築の双方向から分析を行うことを目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画上の項目はほぼ予定通り使用したが、旅費にパック価格等を使用することによって、効率的に経費を使用することが出来たため、当初予算よりも安価に抑えることができた。次年度使用額については、成果報告のための旅費等に使用する。
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