2016 Fiscal Year Research-status Report
フィンランドにおける多文化保育の研究-移民の子どもと生活世界-
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16K04640
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
三井 真紀 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 講師 (80342252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多文化保育 / フィンランド / 移民 / 難民 / 保育所 / 生活世界 / 子ども / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新しい北欧型の多文化保育モデル「フィンランド・モデル」の構築を目指し、多文化環境下にある保育という現象を子ども(0 歳から6 歳)の生活世界を通して分析することである。フィンランド在住の移民の子どもを取り巻くコミュニティーの様相に着目しながら、保育施設・家庭・地域の三者の関係性について包括的に議論することを目指す。とりわけ、乳児期(0 歳)から始まる移民の子どもの生活世界の成り立ちを通して、多文化・多言語環境下の保育の在り方、アイデンティティ形成の実態、乳幼児期の多文化環境における課題を読み解いていく。 初年度は、フィンランドにおける移民家族の実態について、主にフィールドワークを通して最新の基礎的資料を収集した。現地調査では、移民の子どもの活動分析を行いながら、保育スタッフ、保護者、為政者らにインタビュー調査を実施し、フィンランドの保育政策の全体像を把握することができた。同時進行で、移民家族への介入を開始し、所属する文化圏のコミュニティーについて情報を収集しながら、乳幼児の生活世界を分析するための個別的な調査手続きを進めた。 従来、多文化保育を取り上げる際、イギリス型やカナダ型をもって分析する研究が主流であった。しかしながら、フィンランドの移民の増加は顕著であり、その急激な変化に対応する保育現場のアプローチは最新のモデルケースとして分析するにふさわしいことが明らかとなった。また、フィンランドは、2014 年 1 月に保育所管轄が教育省に変更となり、2016 年8月に新しい学習指導要領が完成した。転換期を迎えたフィンランドの保育・教育制度の「今」を取り上げ社会学的に分析することには大いに意義があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに現地調査を5週間実施でき、内容的にも例年以上の収穫であった。さらに、調査前後には、メールやSNSを介して、質的によいフォローアップインタビューと協力者との関係が築けており、すでに今後の具体的な準備を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、具体的な生活世界に着目する。フィンランドにおけるフィールドワークの対象を、移民の子どもの日常に絞り込み、コミュニティーにおける乳幼児のかかわりを観察すると共に、所属する集団の子育て観や保育観を探る。乳幼児を取り巻く生活世界をより正確に分析するため、研究者や保育者らと意見交換しながら、現在のフィンランドの保育システムが子どもの実態にマッチしているか検討する。さらに、小学校低学年の参与観察なども取り入れながら、在住移民の子どもを取り巻くコミュニティーの様相、保育施設・家庭・地域の三者の関係性について、より包括的に議論することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究調査にかかる費用は、ほぼ計画通りに使用できたが、当該年度からのヘルシンキ行き直行便の就航(福岡ーヘルシンキ)により、航空運賃が当初の計画より割安で購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の調査期間が日本の夏休み期間と重なり、航空運賃が割高だと見込まれるため、昨年度の差額分を補てんし航空券を購入予定である。
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Research Products
(3 results)