2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K04808
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
川住 隆一 東北福祉大学, 教育学部, 教授 (20124208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 義和 宮城教育大学, 学内共同利用施設等, 講師 (20733067)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 訪問教育 / 特別支援教育 / 学習環境 / 物理的環境 / 人的環境 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、訪問教育対象児童生徒はどのような学習環境下(物理的環境下および人的環境下)で指導を受けているのか、担当教師はこの学習環境の制限・制約を少なくするためにどのような工夫や取り組みを行っているのか等を明らかにすることである。このため、本年度においては、訪問教育を実施している全国の特別支援学校に対する質問紙調査を実施する一方、日本特殊教育学会第54回大会において自主シンポジウムを設定し本課題に関する参加者との意見交換を行った。 全国調査に当たっては初め、訪問教育を行っている教員20名を対象に予備調査を実施した。次にこの予備調査結果踏まえて本調査項目を確定するとともに、東北福祉大学研究倫理委員会に研究実施に係る審査を申請し承認を得た。調査対象校は、全国の特別支援学校239校とした。質問紙はアンケートⅠとⅡから成る。Ⅰは各学校の訪問教育に関する内容であり、Ⅱは各担当教員が担任をしている任意の対象児1名に関する質問である。各学校には、アンケートⅠは1部、Ⅱは3部を依頼状とともに郵送した。調査期間は2016年11月~2017年1月である。結果、150校から回答を得た(回収率62.8%)。アンケートⅠは、このうちの144校からの回答が有効であった。Ⅱに関しては、148校から合計385事例の提供を得た。このうち257事例が家庭、45事例が障害者施設、81事例が病院、2事例が離島の通常学校にて訪問教育が実施されていた。現在、回答内容を分析中である。 自主シンポジウムにおいては、宮城教育大学野崎義和氏より「超重症児該当児童生徒への訪問教育の現状について」、東京都立村山特別支援学校高木尚氏より「全国訪問教育研究会会員の取り組み」、奈良県立明日香養護学校中村靖史氏より「訪問教育担当教員としての取組と成果」と題する話題提供を受け、参加者らと討論を行うとともに本研究を実施する意義を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)当初の計画通り2016年8月に、仙台市において研究代表者が大会長を務めた全国訪問教育研究大会第29回全国大会への参加者から20名の訪問教育担当教員に予備調査を依頼し、実施することができた。 (2)予備調査を踏まえて実施した全国調査においては調査対象校239校中150校から回答を得た(回収率62.8%)。回収率はこの種の全国調査としてはおおむね満足のいく割合であるとともに、アンケートⅡに関しては385事例の提供を受けて満足のいく結果となった。 (3)調査結果は現在分析中ではあるが、訪問教育対象児がスクーリング等を利用して本校の児童生徒との交流機会が設定されているだけでなく、訪問教育が行われている対象児の家庭や障害者施設の近隣にある小中学校や高等学校の児童生徒との交流機会も多数設定されている実態が見受けられる。このことは、これまで明らかにされてこなかった知見として注目されよう。 (4)日本特殊教育学会第54回大会において設定した自主シンポジウムには、訪問教育の現職教員やその経験のある教員等に多数参加していただき、本研究課題に関わる経験や意見を交わすことができた。またこれらの討論を通して、本研究を実施する意義を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2017年度においては、全国調査の回答内容の分析を継続する。また一部については、日本特殊教育学会第55回大会(名古屋市)において研究発表を行う予定である。さらに、日本特殊教育学会の機関誌「特殊教育学研究」や東北大学研究紀要等への投稿も検討中である。 (2)学習環境の改善に取り組んでいるあるいはその経験がある特別支援学校10校ほどへ訪問し、詳しい取り組み内容を明らかにするためのインタビュー調査や関係資料の収集を行う予定である。 (3)インターネットや文献を通してアメリカ・カナダ・イギリスの訪問教育制度や実施機関の取り組み内容から、学習環境をどのようにとらえているのかを探り、今後のわが国の取り組みに示唆となる点を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる原因は「その他」の経費に当初計画よりも大きな残額が生じたためである。当初の計画では、民間団体の訪問教育に関する平成25年度の全国調査で402校を対象としたと報告されていることを根拠として、本研究でもこの数字に基づいた対象校を想定していた。しかし、全国の特別支援学校のホームページを一つひとつ閲覧したところ、訪問教育を実施している等の紹介を行っている学校は239校のみであり、これを今回の調査対象校とした。そのために調査票と回答用の郵送費が当初計画よりも少ない額で済んだ。また、調査票の印刷は印刷業者に発注せず、用紙を購入して印刷した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額約14万円は、図書費を含む物品費に5万円、旅費に4万円、人件費・謝金に3万円、その他に2万円を振り分けて使用する予定である。
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Research Products
(1 results)