2018 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害学生の英語学習支援:英語力に応じた英語字幕呈示方法と補助教材の開発
Project/Area Number |
16K04819
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
上原 景子 群馬大学, 教育学部, 教授 (40323323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 聡子 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 講師 (20359665)
金澤 貴之 群馬大学, 教育学部, 教授 (50323324)
大杉 豊 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (60451704)
HOOGENBOOM RAY 群馬大学, 大学教育・学生支援機構, 准教授 (80436295)
山田 敏幸 群馬大学, 教育学部, 講師 (50756103)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 聴覚障害学生支援 / 英語教育 / 英語字幕呈示方法 / 英語学習補助教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は,聴覚障害学生の英語学習支援に広く活用できる「英語の能力差に応じた英語字幕呈示方法と補助教材」を実践的に開発することである。今日の英語教育は,コミュニケーション能力育成を目標とするため音声中心で,中学・高校では「英語で英語の授業を行う」ことが,それぞれ基本・原則とされている。英語学習は聴者でも能力差が大きく,レベル対応の学習支援が重視されている。しかし,聴覚障害学生には,英語の音声が多量に授業で用いられる中,それに対応する支援や英語の能力差に応じた支援は有効に開発され始めているとは言えない。そこで,本研究はこれまでの我々の研究成果が示す聴覚障害者の英語字幕の読みの特性を背景に,聴覚障害学生の英語能力差とその特徴を探りつつ,聴覚障害学生のための効果的な字幕呈示方法と補助教材を開発し,立ち遅れている聴覚障害学生の英語学習促進の支援に貢献する。 これまでの我々の聴覚障害児の英語の授業観察では,次の2つの傾向が見られた。第一に,新出文型の学習に重要な動詞や名詞の語尾変化など,英語独自の活用形の習得が困難である傾向が見受けられた。英語ではこうした語尾変化などには強勢が置かれないため,健聴者でも聞き取りにくい。このような聞き取り難さは,補聴器の使用や座席の位置などの配慮があっても,聴覚障害がある学習者には一層難しい。第二に,英語の音声が多用される今日の英語の授業でも,英語の語や文を,カナを表す日本語の手話で表現するなど,日本語の手話を多用して授業が行われている傾向が見受けられた。これらから,本研究では聴覚障害学生の英語の能力差の実態を探りつつ字幕呈示方法向上の取組を行う一方で,アメリカ手話や英語の指文字を取り入れ,聴覚障害をもつ日本人学習者の英語で行う英語学習の質向上と語彙・文構造をコミュニケーションの手段として一層効果的に習得するための補助教材の開発を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,これまで聴覚障害学生の英語能力差とその特性に関する情報収集の方法について吟味し,初期的な情報収集を行ってきた。その情報から,聴者の英語学習における能力差の要因として考えられる事項を挙げることにより,日本人全体について予想できる特有の困難さと日本人で聴覚障害がある英語学習者にとって困難であると予測される事項をまとめることができた。 字幕呈示に関しては,日本語と英語のコードスイッチングや,日本語の固有名詞の英語への誤変換にどのように対処すべきかが,予測通り非常に難しく,引き続いての課題となっている。また,英語で英語の授業を行うことへの対応の一手段としてのアメリカ手話の活用方法の研究では,小・中学校の英語の授業を観察し,そこで用いられているクラスルーム・イングリッシュを分析することができた。このことと,中学校教科書の語彙・文型の分析を合わせて,アメリカ手話の活用方法を考えた。また,日本語,英語,日本手話,アメリカ手話の文構造を比較し,試行的に4言語で同一の内容の補助教材を作成した。 加えて,アメリカ手話の活用では,聴覚障害学生への利点と困難点を,第二言語習得に関する先行研究の成果を研究していくことで,有益な情報が得られている。これらを生かし,補助教材の作成について研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和元年度は,以下を行う。まず,聴覚障害学生の英語学習支援に有効な英語の字幕呈示方法について,大きな課題である日本語の固有名詞の誤変換に関する解決策を引き続き考える。これまでの研究から,誤変換の特徴として,その語だけでなく文の全体あるいは部分に影響するようなものが多いことが分かっているが,アプリケーションの限界とも考えられるものが多いため,授業者側で努力できることも含めて引き続き研究していきたい。アメリカ手話の活用に関しては,中学校教科書の語彙・文型とクラスルーム・イングリッシュで用いる表現を中心とした活用方法をより深く考えていく。加えて,今回考案したアメリカ手話の活用方法と補助教材の試行と改善を行うとともに,補助教材をさらに構築していく予定である。また,取組の成果を実践的に試行して改良し,本研究のまとめを行う。
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Causes of Carryover |
最終年度には,本年度試作した補助教材に次年度構築する補助教材を加えて,冊子とそれに付随するデジタル版を作成し,研究成果として発表する計画である。そのための費用が十分必要であるため,今年度の残額分は次年度の予算と合わせて使用する計画である。
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