2016 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ教育システムにおける中学校の通級の在り方に関する研究
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16K04862
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
笹森 洋樹 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 情報・支援部, 上席総括研究員 (40419940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 上総 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 研修事業部, 主任研究員 (10756000)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 通級による指導 / 中学校 / 現状と課題 / インクルーシブ教育システム / 思春期の課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
インクルーシブ教育システムにおいて通級による指導は連続性のある多様な学びの場の一つとしてさらなる充実が求められる。本研究の目的は、小学校に比べ設置が極端に少ない中学校の通級指導教室について、その現状と課題について整理し、様々な課題を抱える思春期における通級による指導の在り方について検討することである。 平成28年度は、先行研究、事例や実践報告等のレビューを行うとともに、全国の中学校通級指導教室担当者にアンケート調査及び訪問によるインタビュー調査を実施し、担当者が捉える中学校の通級による指導の課題について、その現状を把握した。 アンケート調査は、427校、604名の担当者から回答を得た。分析対象となる生徒数は6145名、回収率は62.2%であった。担当者の教職経験の平均は22年、通級経験年数の平均は3.7年、特別支援学校教諭免許保有者の割合は55.7%であった。通級生徒の男女比は3:1、学年にばらつきはなかった。指導時間帯については、授業時間内77.3%、授業時間外19.6%、不定期4.6%であった。小学校からの継続通級は39.5%であった。通級による指導の課題については、生徒の指導に関する課題として、「授業を抜けることへの抵抗感」、「生徒の実態の多様化への対応」、「特性に応じた教材等の準備」、「指導の客観的評価」等。担当者の専門性の課題では、「公的な研修の機会の不足」、「育成のシステム」、「校内人事等による担当者の決定」、「自立活動や発達検査に関する知識不足」、「免許のない教科の専門性」等。教室運営上の課題では、「生徒数の増加に伴う教員配置」、「勤務時間外の業務量の負担」、「教室配置や教材、備品等の予算確保」等。在籍校との連携では、「通級に関する理解不足」、「連携のための時間設定」、「課題についての共通理解」、「学校間、教員間により意識の差」等が挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の研究計画では、年度末までに関連する内容の研究論文他、事例研究や実践報告等のレビューを行うとともに、全国の中学校通級指導教室にアンケート調査を実施することにより、中学校における通級による指導の現状と課題を把握することとしている。アンケート調査及び訪問調査では、特に発達障害のある生徒に関する指導についても聞いている。中学校期の発達障害のある生徒の状態像は多様であり、自立活動や教科を通した指導の指導計画及び指導内容、指導評価等については、体系化、明確化されたものはなく、担当者個々の力量に委ねられていることがわかった。また、小学校の通級に比べて、教育相談的な対応も多いことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究二年目は、一年目にアンケート調査及び訪問調査により情報を収集・整理した、中学校における通級による指導の現状と課題から、中学校の通級が広がっていかない要因を探るとともに、その具体的な課題解決のための方策の検討を行い、三年目のインクルーシブ教育システムにおける今後の中学校の通級の在り方についてまとめていく。 中学校の通級が広がっていかない要因とその具体的な課題解決の方策の検討にあたっては、小学校、中学校通級をともに多く設置している自治体、中学校の設置が少ない自治体に訪問調査を行い、教育委員会としての考えを情報収集するとともに、中学校の通級指導教室の経験の長い担当者を研究協力者として、アンケート調査、訪問調査等の資料をもとに研究協議を行いまとめていく。
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Causes of Carryover |
本研究では、中学校の通級指導教室担当者に対して、現状と課題に関するアンケート調査を実施した。現状と課題については、通級担当の経験年数による違いも想定されることから、初めて担当になった教員でも今年度の一年間をふりかえり回答ができるように、アンケート調査の実施時期を年度末の3月に設定した。 年度内に業者委託によるデータ入力作業を終える予定であったが、締切日を過ぎてから提出された教員も多かったため、データ入力作業が年度をまたぐことになったことにより、前年度の経費支出には反映されていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査の業者委託によるデータ入力作業は既に終えており、前年度の残額分については、今年度既に執行済みである。
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