2016 Fiscal Year Research-status Report
屈折現象を伴う波動伝播に対する空間遠方での漸近解析とその散乱理論への応用
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16K05241
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
門脇 光輝 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70300548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 秀夫 日本医科大学, 医学部, 教授 (80383371)
渡邊 一雄 学習院大学, 理学部, 助教 (90260851)
渡邊 道之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90374181)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 層状媒質中の波動伝播 / ヘルムホルツ方程式 / 臨界角 / レゾルべント / 解の平滑化 / 微分形式の正則性 / 格子上のシュレーディンガー作用素 / 固有振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者である門脇は、分担者の渡邊道之との協議と連携者の磯崎の助言に基づき、2層媒質からなる3次元無限領域での音響型波動伝播に対するヘルムホルツ方程式の解の漸近解析を、臨界角近傍を含めた形で行った。そして、これを用いて、滑らかさを仮定しない散乱体による波動伝播の様子が2層媒質を反映した球面波によって記述されることを示し、散乱振幅の導出・決定を行った(口頭発表)。なお、得られた結果は、数値計算を行う際の数学的な後ろ盾にもなりうるものである。さらに、渡邊道之は、門脇との協議と磯崎の助言を基に3次元半無限領域での弾性波動伝播問題に対しても類似の結果を得た(口頭発表)。 関連して、分担者の中澤は、ヘルムホルツ方程式の解に対する一様リゾルベント評価式の導出およびその応用として対応する時間発展方程式の解の平滑化評価式の導出を行った。特に2次元外部領域における一様リゾルベント評価式を初めて確立した(口頭発表)。また、分担者の渡邊一雄は、超曲面を界面とするリーマン多様体におけるある微分形式の正則性に関する結果を得た(論文発表)。そして、連携者の磯崎は、摂動された格子上のシュレーディンガー作用素のスぺクトル散乱現象を解析し、散乱の順問題を扱った(論文発表)。さらに散乱の逆問題、特に格子中の欠損の同定を行った。取り扱い得る格子としては六角格子等の個体物理学における重要な例が含まれる(投稿中)。また、連携者の田中は、1点加振では固有振動の励起困難な大型構造物を対象として、複雑な制御を用いずに固有振動を励起し振動特性を計測する振動試験手法を開発した(口頭発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2層媒質からなる3次元無限領域での音響型波動伝播のヘルムホルツ方程式の解に対する臨界角近傍における漸近解析の方法を確立したことに加えて、懸案の1つであった散乱体に滑らかさを仮定しない設定での解析方法も確立できた。そして、研究実績の概要で述べた通りの結果を得た。これにより当初の研究目的の1つを達成した。この研究過程で開発された解析方法は、研究対象である3次元の半無限領域での弾性波動伝播問題にも適用でき、その結果、この波動伝播に対して、研究目的として掲げた結果よりも弱いものではあるものの目的に準ずる成果を得るに至った。以上より、平成28年度研究計画については概ね完成の域まで到達した。なお、これらの結果については、現在投稿準備中である。ただし、並行して行う予定であった計算機による散乱振幅の導出については、手つかずとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、既に得られている3次元半無限領域での弾性波動伝播問題に対する結果の改良を目指す。次に平成28年度の研究成果および経験に基づいて2層媒質からなる3次元無限領域での弾性波動伝播問題と3層媒質からなる3次元無限領域での音響型波動伝播問題に対して研究目的の達成を目指す。また、2層媒質からなる2次元無限領域での音響型波動伝播問題に対して、既に得られている数学的な結果に基づく数値計算を試みる。そして成果を得ることができれば、2次元半無限領域での弾性波動伝播問題についても同様の計算を試みる。
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Causes of Carryover |
2層媒質からなる無限領域での音響型波動伝播問題および半無限領域での弾性波動伝播問題の数学的な研究は、ほぼ研究目的に掲げた域に達した。しかし、研究は数学的な扱いに留まったため、数値計算およびその準備には至らなかった。そのため、パソコンや計算ソフトの購入を見送ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
得られた数学的成果を基に数値計算に向けた準備を行った上で、実際の数値計算を行う。そのために、パソコン、計算ソフトはもちろん数値計算法に関する書籍も購入する。また、旅費として分担者との研究打ち合わせ、研究成果発表および情報収集ための研究会参加のために充てる。さらに研究課題に関連する数学、物理および工学系の書籍を購入する。
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Research Products
(9 results)