2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05295
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
太田 直美 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40391891)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | X線天文学 / 宇宙物理学 / 銀河団 / 高温プラズマ / 宇宙構造形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)超高分解能X線マイクロカロリメータを用いて銀河団内部のガスの速度構造を精密に測定し、銀河団ガスの運動状態と形態の相関を明らかにすることである。さらに、(2)ガス運動や超高温ガスの存在などに起因する銀河団質量の系統誤差を評価すること で、将来の精密宇宙論に備えて高精度の銀河団質量推定法を確立することを目指している。 今年度は(2)に向けて、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam戦略枠観測プログラム(HSC-SSP)のサーベイ領域内にある可視銀河団の系統的なX線解析を行い、銀河団スケール則や力学的進化の調査を進めた。可視銀河団カタログに含まれる約2000個の天体のうち、既存のX線カタログには約500個のX線対応天体がある。そのうち、今回は可視光リッチネスが20以上の約20個の明るい銀河団を対象として、XMM-Newton衛星のアーカイブデータの解析を行った。その結果、電波やX線観測から構築された銀河団サンプルに比べて、本可視光サンプルはX線重心シフトが大きい傾向を持つ一方、光度温度関係のべきは自己相似モデルの予言に近いことがわかった。これと平行して、過去にほとんど観測が行われていない高赤方偏移かつ大質量をもつ可視銀河団 7つをXMM-Newton衛星で新たに観測し、全ての天体から空間的に広がったX線放射を検出することに成功した。これらの研究成果について学会で発表した。 加えて(1)に対して、ひとみ衛星代替機による銀河団ガス乱流マッピングの観測シミュレーションと銀河団質量測定法の検討を行った。この研究結果について国際会議で口頭発表を行い、また査読付き論文が受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度計画していた銀河団の系統的X線解析については、すばる望遠鏡HSC-SSP領域にある天体のX線アーカイブデータや新しい高赤方偏移銀河団のX線観測に基づいて研究を進めることができた。その成果は学会で発表し、また論文執筆を進めた。また将来の詳細X線分光によるガス速度構造測定と銀河団質量推定について結果を公表することができた。一方、今年度予定していたニュースター衛星による衝突銀河団の観測実施が年度末となり、データ解析の進度にやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュースター衛星で取得した硬X線データを解析し、銀河団の質量構造に大きな影響を与える衝突合体現象とそれに伴う高エネルギー現象を調査する計画である。特に、遠方銀河団中の超高温ガス ・非熱的ガスの性質や磁場強度を従来よりも高い精度で決定する。そのため、ニュースター衛星データの硬X線スペクトルやバックグラウンドの詳細な分析に加えて、高温ガスの空間分布の情報を補うためにチャンドラ衛星の軟X線イメージ解析も行う予定である。また、すばる望遠鏡HSC-SSP領域の高赤方偏移銀河団のX線観測結果をまとめ、重力レンズ効果と比較しながら、銀河団スケール則の調査や銀河団の質量較正も進める予定である。
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Research Products
(31 results)
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[Presentation] HSC による弱重力レンズ効果を利用した銀河団探査2018
Author(s)
宮崎聡, 大栗真宗, 浜名崇, 白崎正人, 小池美知太郎, 梅津敬一,内海洋輔,岡部信広,Surhud More, Elinor Medezinski,Yen-Ting Lin, 宮武広直, 村山斉, 太田直美, 三石郁之
Organizer
日本天文学会2018年春季年会
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[Presentation] XMM-Newton 衛星による 5 つの高赤方偏移 HSC 銀河団の観測2018
Author(s)
渡邉翔子, 太田直美, 三石郁之, 大栗真宗, 岡部信広, 赤松弘規, 一戸悠人, 上田周太朗, 大谷花絵, 馬場崎康敬, 浜名崇, 宮岡敬太, 宮崎聡, 他 HSC銀河団コラボレーション
Organizer
日本天文学会2018年春季年会
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[Presentation] HSC-SSP サーベイ領域 Weak Lensing 銀河団の X 線フォローアップ計画 (2)2018
Author(s)
三石郁之, 吉田篤史, 太田直美, 宮崎聡, 大栗真宗, 浜名崇, 岡部信広, 赤松弘規, 一戸悠人, 上田周太朗, 大谷花絵, 馬場崎康敬, 宮岡敬太, 渡邉翔子, 他 HSC 銀河団コラボレーション
Organizer
日本天文学会2018年春季年会
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[Presentation] X 線衛星代替機 XARM における科学運用計画2018
Author(s)
寺田幸功, 田代信, 海老沢研, 深沢泰司, 飯塚亮, 勝田哲, 北口貴雄, 久保田あや, 水野恒史, 中島真也, 中澤知洋, 信川正順, 大野雅功, 太田直美, 志達めぐみ, 菅原泰晴, 高橋弘充, 田村隆幸, 田中康之, 寺島雄一, 坪井陽子, 内山秀樹, 宇野伸一郎, 渡辺伸, 山内茂雄
Organizer
日本天文学会2018年春季年会
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[Presentation] 「ひとみ」によるペルセウス座銀河団の高温ガスの速度場の測定2017
Author(s)
上田周太朗, 一戸悠人, 藤本龍一, 井上翔太, Caroline Kilbourne, 北山哲, Maxim Markevitch, Brian McNamara, 太田直美, Scott Porter, 田村隆幸, 田中桂悟, Norbert Werner
Organizer
日本天文学会2017年秋季年会
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[Presentation] 多波長観測から迫る銀河団RXC J1053.7+5453の衝突過程と粒子加速2017
Author(s)
板花まどか,滝沢元和,赤松弘規, R. J. van Weeren, 河原創, 深沢泰司, J. S. Kaastra, 中澤知洋, 大橋隆哉, 太田直美, H. J. A. Roettgering, J. Vink, F. Zandanel
Organizer
日本天文学会2017年秋季年会
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[Presentation] HSC-SSPサーベイ領域にある可視銀河団のX線フォローアップ計画2017
Author(s)
太田直美, 三石郁之, 赤松弘規, 一戸悠人, 上田周太朗, 大栗真宗, 大谷花絵, 岡部信広, 馬場崎康敬, 浜名崇, 宮岡敬太, 宮崎聡, 渡邉翔子, 他 HSC銀河団コラボレーション
Organizer
日本天文学会2017年秋季年会
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[Presentation] HSC-SSPサーベイ領域Weak Lensing銀河団のX線フォローアップ計画2017
Author(s)
三石郁之, 太田直美, 宮崎聡, 大栗真宗, 浜名崇, 岡部信広, 赤松弘規, 一戸悠人, 上田周太朗, 大谷花絵, 馬場崎康敬, 宮岡敬太, 渡邉翔子, 他 HSC銀河団コラボレーション
Organizer
日本天文学会2017年秋季年会
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[Presentation] X線天文衛星 Athena計画2017
Author(s)
松本浩典, 山崎典子, 満田和久, 篠崎慶亮, 深沢泰司, 鶴 剛, 常深博, 粟木久光, 海老沢研, 大橋隆哉, 太田直美, 馬場 彩, 上田佳宏, 寺島雄一
Organizer
日本天文学会2017年秋季年会