2016 Fiscal Year Research-status Report
ホランダイト型化合物における新規相探索:トンネル内カチオンの精密制御を通じて
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16K05417
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
加藤 治一 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (60363272)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホランダイト型化合物 / トンネル型構造 / 元素不定比性制御 / 試料合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノトンネルを内包するホランダイト型化合物の合成およびトンネル内へのカチオン導入を行った。本年度は、Mnを骨格構造に持つA_x_Mn_8_O_16_ (A= Ba, Ca:トンネル内カチオン)の合成を目指した。本研究ではまず前駆化合物としてトンネル内にイオンの入っていない、ホランダイト類似構造を持つα-MnO_2_をwet methodにより合成するが、従来まで知られていた合成条件の最適化を行うことでより良質の前駆化合物を得た。それを、Ba,Caの硝酸化物と混合し~400℃で固相反応させることで、トンネル内へのBa,Caカチオンの導入に成功した。この方法をとることでBaについては、結晶学的な最大イオン量(組成式A_x_Mn_8_O_16_ではx=2に対応)の約半分までのカチオン導入を、Caについては最大イオン量に近いところまで自由に組成制御できることを見いだした。前駆化合物を経ない通常の固相反応法ではこのようなカチオン量は入らず、トンネル内の化学量論性の制御に新規なルートを開いた。一部の組成については電気抵抗測定・磁化測定を行った。α-MnO_2_に存在した低温での磁気転移が、トンネル内へのカチオン導入によって転移温度が変化あるいは消失することを見いだした。カチオン導入、およびそれによるMn電子数の変化に応じて物性が大きな影響を受けることを確かめた。 なお、本研究はMnに限らずV,Ruホランダイトを合成し、それらのNMRによる微視的測定を視野に入れている。その比較も兼ねてあらかじめRuを含むペロブスカイト型化合物CaCu_3_(Ti_x_Ru_1-x_)_4_O_12_のNMR測定も行った。イオン配置により大きな電場勾配の変化が生じることを見た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料合成については、中間化合物を経ることによる合成ルートの確立・条件の最適化などについて概ね実験計画通りに進んでいる。中間化合物と混合するカチオンの塩の種類について検討した結果、成果の欄で示したように硝酸化物が最も効率が良いことを見いだした。実際にトンネル内に入ったカチオンの定量は、X線回折、EDS分析、TG-DTA装置を用いた還元反応による重量変化を測定することで行う予定であって、実際にこれらの測定を行ったものの、試料に若干の不純物(原料の反応残存物含む)があるため、それが定量の確度を低下させているのが現状である。物性測定は、当初企図していたマクロ測定は一通りできた。ただ、実際にトンネル内に入ったカチオン量がやや不定であるため、カチオン量に対する電子的な相状態の変化図の確定には至っていない。微視的測定はより良質の試料を得て行おうと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き計画通り研究を推進していく。試料合成については、試料の純度をあげてトンネル内のCa,Baカチオンの定量をまず行い、(この方法で入りうる)組成限度を明らかにする。次にそれ以外のカチオンが入らないかどうか試していく。1価・3価のイオンが入るならば、Mn電子数の変化が広い範囲で連続的に実現できることになり、相図作成の上で興味深いであろう。本年度はMnを骨格とするホランダイト化合物に限ったがV,Ruを骨格とするものの合成にも同様の方法を敷衍していこうと思う。物性測定については、きっちりとカチオン定量が行われた試料についてマクロ測定を行うことで電子相図を確定させた上で、NMRによる微視的測定を行う。四重極スペクトル、緩和時間の測定により電子の静的動的性質を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
助成金は研究目的に応じておおむね計画通りに使用した。少額が残ったが、不要不急なものを購入するなどして無理に使い切るより、次年度予算に合算して使用するのが有意義に効率的に使用できると考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残は少額であるので、当初計画より大きな変更無し。繰り越し予算は、新年度の予算と合算して消耗品(薬品)の購入にあてる。
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Research Products
(2 results)