2016 Fiscal Year Research-status Report
陸上テフラを用いた海底火山の高分解能噴火活動史解明と周辺陸域への影響評価
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16K05584
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (70359206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
及川 輝樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10435761) [Withdrawn]
豊福 高志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 主任研究員 (30371719)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大室ダシ / 浅海噴火 / 伊豆小笠原弧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は北部伊豆小笠原弧の活動的な珪長質海底火山である可能性が高い、大室ダシについて海底調査と陸上テフラ解析を組み合わせることで、未解明な部分が多い海底火山の火山形成発達史や活動履歴、さらには噴火による周辺陸域への影響を、これまでにない高精度な時空間分解能で解明することを目的としている。 このために平成28年度は大室ダシ周辺の海底調査・陸上調査を実施し、採取した火山噴出物・堆積物の室内分析を実施した。主な実施内容は以下の通りである: [海底調査]大室ダシ火山の形成発達史とマグマシステムの岩石学・地球化学的特徴を明らかにすることを目的に、平成28年5月に海洋研究開発機構所属調査船「新青丸」KS-16-6航海を実施し、無人探査機を用いた潜航調査を行った。この調査によって大室ダシ平頂部に新たに複数の溶岩ドームが発見され、大室ダシにおける最近の火山活動が従来の想定よりも広範囲に及んでいることが明らかになった。またより機動的に海底調査を行うために深海カメラを搭載した小型カメラそりを製作した。このカメラシステムを用いて筑波大学所属の調査船「つくばII」を用いた海底調査を平成28年10月に予定していたが、台風による荒天によってキャンセルとなった。 [陸上調査]大室ダシにおける過去の浅海噴火による周辺陸域への影響を明らかにするために平成28年7月に新島周辺の野外調査を実施し、大室ダシ火山の噴火由来のテフラ調査を行った。 [火山噴出物分析]海底と陸上から採取された大室ダシの火山噴出物について記載岩石学的研究を行い、全岩化学組成分析を進めている。 [堆積物分析]大室ダシ海域航海で採取した堆積物を微化石研究用に洗い出し、底生有孔虫の拾い出しを行った。流れ込みと考えられる異地生の有孔虫遺骸を認めたが現地性の割合も少なくない。今後種の同定を行い、現場環境を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大室ダシ火山の海底調査については、台風によって「つくばII」航海がキャンセルになったものの、新青丸KS-16-6航海で実施した無人探査機の潜航調査によって大きな成果を挙げることが出来た。採取された噴出物試料の岩石学・地球化学的分析についても予定通り進行している。 大室ダシ火山由来の陸上テフラについて、陸上調査において新島周辺においてその露頭を確認することが出来なかった。平成29年度はより調査範囲を拡大し、また既にテフラの存在が確認されている伊豆大島と利島のより詳細な調査を計画している。 また研究分担者であった産業技術総合研究所の及川輝樹研究員が平成28年10月1日付で気象庁火山課に在籍出向し、科研費の応募資格を喪失した。それよって研究分担者から及川は削除されたが、研究代表者がその役割(テフラ解析)を代行し、また当人からも引き続き研究協力を得られることから、当初の研究計画を予定通りに遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は昨年度台風によってキャンセルになった調査船「つくばII」を用いた大室ダシ周辺海域の調査航海を夏~秋に計画している。また陸上テフラの調査を集中的に行い、大室ダシ周辺島嶼に分布する珪長質テフラの系統的な記載・サンプリングを行う。 珪長質テフラに含まれる軽石・火山ガラスの地球化学・岩石学的特徴を明らかにし、大室ダシや周辺の流紋岩質火山の噴出物と比較することで給源を同定する。さらには各調査地点における大室ダシ起源のテフラの分布域・層厚を比較することで、噴火規模の推定を行う。これによって浅海火山噴火に伴う周辺陸域への被害の実像を初めて定量的に解明する。 陸上調査で採取されたテフラについては火山由来以外の微化石などの構成粒子についても分離・同定する。もし大室ダシ起源と同定されたテフラのみに海産微化石が含まれていることが示された場合は、その種類・量比から生息環境(底層・浮遊性)を制約し、その産状などから噴火の際にどのように噴煙柱に取り込まれ、運搬されたのかを明らかにする。 これらの成果については平成29年8月にアメリカ・オレゴン州で開催予定の国際火山学及び地球内部化学協会(IAVCEI)総会において発表予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた筑波大学下田臨海実験センターの船を使用した調査航海が台風の影響でキャンセルになり、次年度に延期となった為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査航海・研究打ち合わせの旅費として使用予定。
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