2016 Fiscal Year Research-status Report
レーザー冷却原子の光会合によって生成する質量選別Yb2分子の高分解能分光
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16K05654
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
馬場 正昭 京都大学, 理学研究科, 教授 (80189729)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イッテルビウム分子 / 冷却原子トラップ / 光会合 / 質量同位体選別 / 高分解能スペクトル / ポテンシャルエネルギー曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,MOTを用いて,Yb原子の単一の質量同位体だけを捕捉したのち,レーザー光会合によって質量同位体選別のYb2分子を生成し,その高分解能レーザー分光を行うのを最終目的としている.この目標を達成するためには,比較的高濃度のYb2分子を光会合で生成できるMOTの装置と,光会合レーザーシステムが必須であり,まずはその開発を行った.技術的には,超高真空のMOTチャンバーを製作し,その中心に安定で高出力な単一モードレーザー光と,Yb原子線を正確に交差させることが重要で,現在ほぼ完成しており,予備実験を続けている.これと同時に,Yb2分子のスペクトル探査が必要であるが,これについては,波長可変ナノ秒パルスレーザーと高温ノズルを用いた分子線の装置を開発した.Yb2分子の電子スペクトルはまだ報告されておらず,吸収帯の波長も全く未知であるが,これについても探査観測を続けている段階である. もうひとつの目標であるポテンシャルエネルギー曲線の決定については,量子化学理論計算を試行して,その概要が明らかになった.その結果を基に電子遷移の吸収帯の波長予測を行って実験の指針とするとともに,今後さらに精度の高い計算ができるかどうかの検討を進める. これらの研究探索を総合的に進めて,まずは超高分解能スペクトルの測定と単一振動回転スペクトル線の帰属,分子定数の正確決定を行う.単一質量同位体別のスペクトルを測定するのは極めて重要で,MOTでの光会合の検出がその鍵となるであろう.それぞれの分子定数が正確に求まったら質量スケーリング則を導入し,理論的な考察を行って,最終的には化学結合の機構を明らかにしたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Yb原子の単一の質量同位体だけを捕捉するMOTの装置はほぼ完成し,充分な濃度の原子をトラップすることに成功した.現在は,これにさらに周波数を安定化させた単一モードレーザー光を加えて光会合を起こし,単一質量同位体のYb2分子を生成させる試みを行っている.まだその検出には至っていないが,複数のレーザー光の出力を増強し,周波数の安定化をさらに強化することで,改善を図っている. 波長可変ナノ秒パルスレーザーと高温ノズルを用いた分子線によるYb2分子の電子スペクトルの探索については,高温で安定に動作するノズルを開発し,いくつかの波長領域でレーザー光の吸収とそれに伴うけい光発光を検出することができた.現在はスペクトル強度の増強のための改善と,広い波長領域にわたるスペクトル測定を継続して行っている. ポテンシャルエネルギー曲線の決定については,量子化学理論計算の最適な方法を模索していたが,充分な精度で計算を行うことができるようになり,これも現在進行中である. いずれも,平成28年度の研究計画に従ってほぼ順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画では,主に高分解能スペクトルの測定とその解析を掲げているが,現在進めているスペクトル探査を計画通り順調に進めていけば,目標は充分達成できると考えている.平成29年度は,消耗品費と旅費を計上しているが,これは継続的な測定に用いる真空部品,レーザー色素,試薬の購入に充てる.旅費については,国内の学会に参加し,研究発表と同時に研究者との情報交換を行いたい.
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