2018 Fiscal Year Research-status Report
Pb,Biを含むアニオン複合化物における秩序構造の解明と新規構造物性開拓
Project/Area Number |
16K05731
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
岡 研吾 中央大学, 理工学部, 助教 (80602044)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 複合アニオン化合物 / 精密構造解析 / 酸フッ化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はPbを含む酸フッ化物を対象とし本研究課題を遂行した。前年度に引き続きRuddlesden-Popper型層状ペロブスカイトPb3Fe2O5F2の研究を行い、380 K付近で起こる構造相転移、そしてそれに伴う磁化容易軸の変化の起源について結晶学的な観点から考察をした。電子線回折および57Feメスバウアー分光を行い、得られた消滅則と鉄の局所環境の情報を元に、これまでの課題であった低温相の空間群についての詳細な検討を行い、空間群を決定することに成功した。見いだした空間群を元に放射光粉末X線回折および中性子回折実験の結果を元にリートベルト解析による構造の精密化を行った。その結果、フッ素と酸素を複合化したことに由来する構造相転移前後での鉄付近の配位状況の大きな変化が、磁化容易軸の変化に繋がっていることがわかった。鉄に対するアニオンの配位が変化することにより、3d軌道の結晶場分裂が変化し、eg軌道でエネルギーの逆転が起こる結果、鉄イオンのスピンの安定な向きが変化することが見いだされた。また、フッ化物アパタイトの研究も行い、Pbを含む酸フッ化物においてフッ化物イオンが動的に出入りすることが空気中でのアニール前後の格子定数変化、インピーダンス測定、17F NMRにより見いだすことができた。このような振る舞いはBa,Sr系では見られず、Pb系だけに特有のものである。この結果はPbの持つ特異性を示唆するものであると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予期しなかった温度誘起の磁化容易軸変化という現象が観測され、さらに結晶学的観点からその起源を明らかにすることができた。このような振る舞いをする物質は非常に珍しく、今後の物質設計指針を示すインパクトのある研究成果となり得る。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きアニオン複合化物を研究対象とし、異種アニオンとカチオンの結合の違いに着目した物質の機能開拓を行っていく。具体的には、PbとPbを含まないフッ化物アパタイトの格子ダイナミクスの比較や、計算化学と連携したPb-O/F結合の異方性について明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
2018年度中に、2019年度からの近畿大学理工学部応用化学科への異動が決まっため、研究計画に大きな変更を行う必要があった。
|
Research Products
(9 results)