2017 Fiscal Year Research-status Report
サブppmレベル微量元素の化学結合状態を明らかにするXAFS解析手法の開発
Project/Area Number |
16K05834
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Research Institution | SAGA Light Source, Kyushu Synchrotron Light Research Center |
Principal Investigator |
岡島 敏浩 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, ビームライングループ, 主任研究員 (20450950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河本 正秀 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, ビームライングループ, 副主任研究員 (00300864)
瀬戸山 寛之 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, ビームライングループ, 副主任研究員 (30450951)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | XAFS / ケミカルシフト / 弾性散乱 / 非弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
XAFSスペクトルはその詳細な解析により元素の化学結合状態を明らかにすることができることなどから,微量元素への適用が期待されている.しかし,以下に示すような種々の理由によりサブppmレベルの微量元素への適用は限定的である.蛍光X線によるXAFS測定での微量元素の検出下限を下げることのできない要因として,①空気散乱などによるバックグラウンドの増加,②近接する蛍光X線,③弾性散乱X線,④非弾性散乱X線の寄与があげられる. 昨年度までに,弾性散乱や非弾性散乱の寄与を正確に見積もるために必要なMCAの全チャンネルの蛍光X線スペクトルを測定するためのソフトウェアの開発を行ってきた.本年度はより多くのデータの計測と解析が行えるようにソフトウェアの高度化を行い,実用レベルのXAFS解析が行えるスペクトルの取得が可能となった.このソフトウェアを使用することにより,これまででは,化学結合状態の違いを明らかにすることが難しかった化合物についても,実用レベルで化学結合状態の違いを容易に検出できることを確認した.加えて,弾性散乱や非弾性散乱が重なるKβ線からこれら散乱の寄与を差し引くことにより,Kβ線を用いてもKα線と同様なXAFSスペクトルを得ることができ,また,酸化状態の違いによるXAFSスペクトルの違いを検出することに成功した.これらの成果については第31回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムでポスター発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化クロム(Cr2O3)を窒化硼素(BN)粉末で希釈し,数1000ppm~1ppmの濃度範囲において評価用試料の作成を行った.この試料を用いて濃度と吸収端でのエッジジャンプの大きさとの間で検量線の作成を行い,この検量線の外挿から本手法においてサブppmレベルの信号の検出が可能であることを確認した. 直径50μm径と10μm径の2種類のポリキャピラリプレートを用いて吸収端エネルギー近傍で入射X線のエネルギーを変えながら蛍光X線スペクトルの計測を行い,元素固有の蛍光X線と弾性散乱および非弾性散乱の寄与との関係について調べた.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,本手法を用いたサブppmレベルでのXAFSスペクトルの簡便な検出法の開発を行う.また,Kβ線を用いたXAFSスペクトルの取得において,これまで試料中に含まれる微量元素からの蛍光X線スペクトルが主元素の蛍光X線スペクトルと重なるため詳細なスペクトルを得ることのできなかった系(例えばVをドープしたTiO2など)において,添加元素の化学結合状態を明らかにすることを目指す.
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Causes of Carryover |
(理由)X線コリメーティングスステムの改良のために購入する一部のデバイスにおいて,納期がかかるため.
(使用計画)すでに発注を行っているため,翌年度早々には納入予定である.
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Research Products
(2 results)