2017 Fiscal Year Research-status Report
熱可塑性CFRPの接合成形による高強度大型構造部材の作成法
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16K06006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
立野 大地 金沢大学, 自然システム学系, 博士研究員 (30714159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 猛 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30175020)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱可塑性CFRP / 接合 / プレス成形 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.U字ビームの成形精度の向上:成形したU字ビームどうしを接合するためには,成形後のU字ビームの両端に各層の端部が3mmずつずれた階段継手を実現することがまず重要であるが,正確にその階段継手を形成するため以下の改善を実施した.(1)積層したシートの中央部(曲げ変形を受けない領域)をあらかじめプレスで加熱圧着する.(2)金型に離型剤を塗布する.(3)プレス成形前の加熱の際,階段継手領域を除いた部分加熱とする.これらの工夫により,U字ビーム成形中の各層の相対的なずれと金型に対するシート全体のずれを防止し,継手部の繊維の乱れを抑制し,より精度の高い継手構造を持つU字ビーム(長さ244mm,幅106mm,継手を含む高さ68mm,板厚3mm)を成形することができた.これにより成形したU字ビームどうしのはめあわせが容易になった. 2.接合金型の設計製作:成形後のU字ビームどうしを接合して閉断面ビームを成形するための金型(接合金型と呼ぶ)と,その閉断面ビームを長手方向に接合する金型(連結金型と呼ぶ)を設計製作した.いずれもプレス機を用いて閉断面ビームの成形とそれらの連結を可能にするものである. 3.接合による閉断面ビームの成形:接合金型を用いて継手部のみを部分加熱圧着することでU字ビームどうしを接合し,閉断面ビーム(長さ244mm,幅106mm,高さ106mm,板厚3mm)を製作するができた.接合部の表面は平滑で,内部組織の観察からはボイドなどの欠陥は見当たらず,密な組織の継手を実現できていることを確かめた.接合過程で成形品がずれないように,仮固定治具やガイドを設け,金型の改善も行った. 4.接合部の強度評価:接合部の曲げ強度は615MPaで,基礎実験において密閉金型で製作した階段継手の曲げ強度と同等であることを確かめた.引張試験ではすべての試験片が継手以外の部分で破断した.その強度は325MPaであるので,継手部は少なくともそれ以上の引張強度を有すると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展していると判断した第一の理由は,閉断面ビームの成形に成功したことが挙げられる.成功に至った要因として,U字ビーム自体の成形精度を向上したことがある.昨年度成形したU字ビームは,当初の想定を上回る結果ではあったものの,金型に対するシートのずれや継手部の繊維の乱れなどの問題があり,これらをはめあわせることが困難であった.今年度はまずこれらの問題の解決を図り,概要で述べたとおりの工夫を試み,U字ビームの成形精度の向上を達成し,これらのはめあわせを容易にした.このような技術的発展があり,接合そのものを成功させることができた. 第二の理由は,閉断面ビームの継手部において,高い接合強度を実現したことである.これは,精度の高い継手部どうしをはめあわせたことで,繊維の隙間のすくない密な継手構造を実現できたためである. 一方で部分加熱圧着による課題も明らかになった.すべての引張試験片が継手部より外側で破断し,その強度は325MPaであり元のシートの強度に対して低い.破断した位置は,接合金型の加熱板が接触する領域との境界線であり,その内部組織を観察すると,階段継手に直行する繊維(引張方向の繊維)が局所的に座屈していることがわかった.部分加熱圧着では,圧力によって流動する溶融樹脂が周囲の固体状態の樹脂にぶつかり,それにともない繊維が座屈すると考えられる.これは部分加熱圧着における一般的な問題であるので,これの解決は重要課題である. 閉断面ビームを長手方向に連結することがまだ実施できていないが,金型は製作済みであること,長手方向の継手の成形精度も高いことから,これは早期に実現できると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
1.閉断面ビームの長手方向の連結:今年度は,閉断面ビームを長手方向に連結し,接合成形法により長尺部材をプレスで成形できることを示す.金型は製作済みで,閉断面ビームの成形の知見を活用できるので,実現は十分可能である. 2.繊維の座屈のメカニズムの解明:部分加熱圧着による繊維の座屈が,接合過程のどの時点でどのように生じるかを明らかにする.より詳細な組織観察や基礎実験によって解明する. 3.繊維の座屈を防ぐ方法の解明:加熱温度,接合圧力,金型構造などを見直し,繊維の座屈を防ぐ方法を検討し,その効果を確かめる. 4.研究成果の公表:本研究で得た成果を学会発表や論文の形で公表する.平成30年度塑性加工春季講演会での講演が決定している.
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