2016 Fiscal Year Research-status Report
廃酸を使用したコンクリート用骨材の回収システムの検討
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16K06448
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
栗原 哲彦 東京都市大学, 工学部, 准教授 (50262746)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 廃酸 / 塩酸 / ギ酸 / 溶解速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
鋼材洗浄に使用された,鉄分と硫黄分の含有が多い硫酸(鋼材洗浄時の硫酸濃度は13%)の廃酸を使用した。まず、廃酸濃度100,50,20%の水溶液400mlにモルタル片35gを入れ,振とう器で7日間振とうさせ(110回転/分)、溶解実験を行った。なお溶解中に適時、モルタル片の質量を計測した.その結果、溶解7日目では、廃酸を用いた場合、著者が過去の研究で溶解に最適と判定した塩酸濃度20%の水溶液より、多くのモルタルが溶解した。これより、塩酸濃度20%の水溶液より廃酸の水溶液の方が、溶解能力が高いことが分かった。しかし、廃酸のみによる溶解では時間がかかり過ぎる点が問題視された。よって、次に、溶解速度を上げる試みとして、廃酸と塩酸,蟻酸,酢酸との混合溶液を作製し、同様の溶解実験を行った。廃酸濃度100%の溶液200mlに各酸濃度20%の溶液200mlを混ぜたものを使用した。モルタル片の溶解率の変化を見ると,廃酸と塩酸の混合溶液で、廃酸のみによる溶解より溶解速度が上昇し、良好な結果が得られた。これは,廃酸(硫酸)のモルタルの溶かし方と塩酸のモルタルの溶かし方がそれぞれ違い,それらが混ざり合うことにより溶解率が上がったと考えられるが、溶解のメカニズムについては今後の課題である。また、廃酸の骨材への影響を見るために、廃酸に粗骨材を浸漬され、その変化を観察した。その結果、 カルシウムの含有量が少ない黒味の粗骨材では、浸漬後も質量の変化はなかったが、カルシウムの含有量が多い白味の粗骨材では、浸漬により骨材の質量の減少を確認した。これにより、使用されている骨材種により、溶解による骨材回収の方法が取れない可能性があることが分かった。 なお、平成28年度は、当該年度に得られた研究成果をまとめ、公表する時間を十分に持てなかった。そのため、平成28年度内に研究成果の公表に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に掲げた平成28年度の研究実施計画に従い、(1)廃酸(強酸、弱酸)による溶解の可否とモルタルの溶解に最適な濃度の決定、(2)廃酸の骨材への影響を検討した。その結果、以下の成果を得た。(a) 廃酸によりモルタルを溶解することが可能であった、(b) 溶解速度を上げる試みとして、廃酸と塩酸,酢酸,蟻酸との混合溶液で実験を行った結果、廃酸と塩酸の混合溶液で良好な結果が得られた、(c) 粗骨材のみを酸溶液に含浸し、コンクリート溶解を行った際に起こりうる骨材への影響を観察した結果、カルシウムの含有が多い骨材では、骨材自身が酸溶液により溶解することが分かった。 以上より、平成28年度の研究計画は順調に進行し、有用な成果を得た。ただし、廃酸により発生する気体の調査は、発生気体量が少なかったため実施できなかった。これより、研究達成度を85%と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の成果を受け、平成29年度は以下の実験を行っていく。 (1)廃酸により、コンクリートを溶解し、溶解期間中における再生骨材の密度及び吸水率の変化を調査する。 (2)廃酸でコンクリートを溶解した後の酸溶液から、カルシウム分の成分分離実験を行う。 また、平成29年度は、平成28年度に得た研究成果をまとめ、研究成果の公表を行う。
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Causes of Carryover |
薬品の購入での使用を想定していたが、平成28年度での薬品使用量が減り、残額が残ったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究で使用する薬品代に充てる予定である。
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