2017 Fiscal Year Research-status Report
収縮がRC部材のせん断耐力に及ぼす影響に関する耐久性力学的研究
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16K06476
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
伊藤 睦 中部大学, 工学部, 准教授 (00345927)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乾燥収縮 / せん断 / RCはり / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾燥収縮解析は,水分移動に関する拡散方程式を解くことで部材内部の水分量分布を推定し,その水分量から求められる乾燥収縮ひずみを初期ひずみとして与えることで実施される。そのため,部材内の水分量分布を適切に評価することと,若材齢時コンクリートの乾燥収縮ひずみを適切に評価することが重要になる。コンクリートの収縮ひずみに関しては,これまで多くの知見が得られているが,試験体内部の相対湿度データとセットのデータは非常に少ない。今年度の研究では,載荷実験に使用するRCはり試験体内各部位の相対湿度変化に関するデータと使用したコンクリートや試験体内部のコンクリートひずみ変化データを取得した。乾燥させたはり試験体とアルミテープでシールした試験体の載荷実験を行った結果,本研究で採用したせん断補強筋を有さない小型断面のRCはりの場合,収縮による初期応力は,曲げひび割れ発生荷重や曲げ剛性の低下に影響を及ぼすことが確認されたが,収縮による初期応力は,斜めひび割れ発生荷重を僅かに低下させるにとどまり,耐力は収縮の有無によらずほぼ同程度であることが確認された。載荷中の引張鉄筋ひずみの挙動に着目したところ,載荷前のひずみ状態は異なるものの,曲げひび割れ発生後はほぼ同様な挙動を示す頃が確認された。 数値解析的研究では,コンクリートや鉄筋に初期ひずみを導入することで,乾燥による初期応力状態を模擬した耐荷力解析を実施した。その結果,実験と同様に,斜めひび割れ発生荷重にはわずかな変化が確認されたが,耐力は,初期ひずみが大きいほうが大きくなる結果が得られた。これは,はり内部の応力状態等から,初期応力の存在により,斜めひび割れ発生後のはりの耐荷機構がアーチ機構に移行したためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的研究では,収縮しやすいコンクリートを使用したRCはりの載荷実験を通じて,コンクリートの収縮がRCはりのせん断挙動に及ぼす影響について検討した。併せて,数値解析の検証に資するために,養生期間中の試験体内部やテストピース内部の湿度データ,鉄筋ひずみ挙動,および使用したコンクリートの自由収縮ひずみのデータを取得した。解析的研究では,コンクリートや鉄筋に初期ひずみを導入してRCはり部材の乾燥収縮による初期応力状態を模擬することで,初期応力状態がはりのせん断挙動に及ぼす影響を評価した。 その結果,本研究で使用したせん断補強鉄筋を有さない小型断面のRCはりの場合,以下の結果を得た。初期応力の違いにより,曲げひび割れ発生荷重の低下する。乾燥収縮により導入された初期応力により,斜めひび割れ発生荷重は僅かに低下するが,せん断耐力はほぼ同程度である。この傾向は,数値解析でも確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
試験体内部の相対湿度データが取得できたことから,湿気移動解析結果と実験データを比較することで,湿気移動解析の高精度化を図る。また,試験体内部の相対湿度変化に伴うコンクリートの収縮ひずみ評価の高精度化を図る。 断面が小さい昨年度の実験結果等からは,収縮がRCはりのせん断耐力に及ぼす影響は顕著でなかったことから,断面幅や断面高さを変数とした数値解析的検討を実施する。 実験的研究では,打ち込み直後のデータが取得できていないことから,再度同様の実験を実施することで,実験データの取得と昨年度の実験データの妥当性の検証等を行う。
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Causes of Carryover |
次年度の実験的研究で必要となる計測消耗品の予算を確保するため
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