2017 Fiscal Year Research-status Report
余剰汚泥の肥料化過程で発生するMVOCsの生物脱臭に関する研究
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16K06554
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西村 和之 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (00261595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎田 省吾 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80398099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MVOCs / 有機性肥料 / 生物脱臭 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、第一番目のテーマである肥料化施設における微生物叢の変遷とMVOCsの発生挙動の把握を実施した。 有機性肥料の肥料化プロセスである好気性発酵において微生物の代謝によって産生されるMVOCsの測定を継時的に行い発酵状態との関係を調べた。発酵状態をMVOCsの発生状況で評価すると、杉チップの場合は、3-Octanolの減少であり、竹チップを用いた場合は、2-Butanone、2-nonanoneや1-Octen-3-olの増減状態で把握することができた。また、生分解性の高い竹チップの場合は、CECの値や増加傾向でも発酵状態を評価することができた。一方、次世代シーケンスから得られた微生物叢を主成分分析で評価すると、杉チップでは菌叢変化が小さく、微生物を保持する機能として安定しているが、竹チップは、竹の生分解性の高さのため、竹チップ分解微生物の変遷によって菌叢の変化が大きくなった。 一方,二番目のテーマであるMVOCs等の“悪臭”成分の産生と代謝に関与する微生物種の把握に関しては,前述の肥料化施設の反応槽内や脱臭装置内の試料から,寒天培地等を用いて微生物を単離し,生化学的性状やシーケンス解析によって同定を行うとともに,生育条件の違いによるMVOCs等の発生・分解挙動を把握した。 戻し肥料から微生物を単離し、16SrRNAをターゲットとしたホモロジー解析とアピ試験を用いて生化学的性状による同定を行ったところ、単離したものは全てグラム陽性菌でありBacillus族であった。また、単離を行った菌とMVOCsの関係を求めるために、それぞれの単離菌を滅菌した戻し肥料に加え一晩培養したところ 2-Butanoneにおいて、菌株No,1とNo,8で産生が見られ、逆にNo,4とNo,6では分解が行われていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥料化過程で発生するMVOCsの挙動を把握しMVOCsによって発酵状態を評価できることが示された。 また、戻し肥料や脱臭装置から微生物を単離し遺伝子解析や生化学的性状に基づく同定を行った結果、単純に取得される微生物は、全てグラム陽性菌であり枯草菌の仲間であった。 本年度までは、主として発酵状態の性状を臭気成分で把握することを目的としてため、発酵過程におけるMVOCsの挙動を重点的に検討していたが、発酵状態の評価方法としてのMVOCsの特性は、ほぼ確定できたことから、H30年度は、実施設で問題となるアルデヒド類などの悪臭物質の情報を得る必要がある。 また、戻し肥料や施設から得られた新規の菌株数は、10株程度と少ないことが課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、第一番目のテーマである肥料化施設における微生物叢の変遷とアルデヒド類を中心とする悪臭成分の発生挙動の把握を実施する。 有機性肥料の肥料化プロセスでは、有機物の分解課程で発生するアルデヒド類が施設の悪臭問題として課題となる。本年度は、悪臭成分として規制が求められている6種類のアルデヒド類に着目し、好気性発酵において有機物の分解謝によって産生される悪臭成分の測定を継時的に行い発酵状態との関係を調べる。その結果をもとに、何時、どの様なアルデヒド類が発生するかを把握し脱臭装置の運転管理に必要な情報の取得を目指す。 二番目のテーマであるMVOCs等の“悪臭”成分の産生と代謝に関与する微生物の探索とその培養条件や生物脱臭条件の探索は、本年度に重点的に実施する。 具体的には、既に取得しているMVOCs脱臭能を持つ株の培養条件の決定を行い、合わせて更なるMVOCs脱臭能を持つ菌株の取得を目指す。また、MVOCsのみならず、悪臭成分でアルデヒド類の分解活性を有する菌株の取得を試み、有機性肥料の製造施設における生物脱臭に有用な微生物の取得と最適な運転条件の把握を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、論文執筆の遅延による英文校閲費用の支出が発生しなかったことと菌叢解析手法を次世代シーケンサーを用いた方法に変更したことによる支出額の減額による。 引き続き、論文執筆を進めて英文校閲に対する支払いを行うと同時に次世代シーケンサーの利用に伴う経費削減を試料数の増加で補い、研究成果の充実を図ると共に手期限内における適正かつ全額の執行を目指す。
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Research Products
(2 results)