2017 Fiscal Year Research-status Report
市民ファンドを活用した新しい公共空間の形成に関する研究
Project/Area Number |
16K06629
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
土井 良浩 弘前大学, 大学院地域社会研究科, 准教授 (80736801)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 早苗 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (90313353)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 市民ファンド / コミュニティ財団 / 公共空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、大きく二つの作業をおこなった。 第一に、主要研究対象である「市民ファンド」の仕組みの実態把握、(市民ファンドの助成先団体の)市民まちづくり活動の情報収集を目的に、市民ファンドやその助成先団体のデータベース化の作業を進めた(前年度から継続)。具体的には、①各市民ファンドが実施している、市民団体へ資金助成やファンドレイズ支援ではない、資金提供以外のプログラム(その目的、具体内容、運営体制・方法、資金提供プログラムとの関係など)の整理、② ①のプログラム毎に市民ファンドの助成先団体・事業のリスト化(団体名、事業目的・内容、支援内容などを整理)をおこなった。また、新しい公共空間の形成事例の抽出を目的に、③ ②の内、「新しい公共空間」を形成していると考えられる団体の基本データ(目的・組織・事業内容など)と該当する活動の内容についての情報収集を進めた。 第二に、市民ファンドの仕組みと「新しい公共空間」形成の実態把握を目的に、コミュニティ財団としては、京都地域創造基金、あいちコミュニティ財団(以上二つの財団は過去にヒアリング済)とともに先駆けである、公益財団法人みらいファンド沖縄を対象に調査を実施した。具体的には、事前のWeb調査、現地でのヒアリング調査、財団の支援団体の活動拠点二カ所の現場視察に加え、同財団が独自に開発実践している特徴的なプログラムである「円卓会議」の参与観察をおこなった。この円卓会議は上記「資金提供以外のプログラム」に該当し、一般参加者への地域課題の共有や特定テーマに基づくコミュニティ形成を狙ったものである。同様なコミュニティは課題解決に取り組む市民団体の支持基盤となる可能性が高く、資金提供以外のプログラムが果たす役割の重要性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では当初の計画段階で「公共空間」を公有地、公有財産として狭義に捉えていた。一方、今年度の作業を通じて、市民ファンドの助成先団体が、民有地を公益目的に活用しているケースが散見された。例えば、視察した公益財団法人みらいファンド沖縄の助成先団体―――乳がん患者のピアサポート、子どもの貧困、薬物中毒からの社会復帰などに取り組むNPOなど―――は、いずれも民有地に拠点を有している。財団の事業内容も行政からの独立性が高く、むしろ現状行政が公共サービスで賄えない社会課題領域を財団が開拓していた。ここで実現している「新しい公共空間」は、従来の“公共と民間との境界上”に存在するものである。むしろ民有地の公益的な活用こそ「新しい公共空間」の在り方のひとつであるとの認識が得られたため、公共空間の概念を拡張してデータベース化の作業を行う必要が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、全国コミュニティ財団協会の事務局の担当者など、市民ファンドやコミュニティ財団に精通した人物や実務経験者に相談しながら、研究を進めることである。 また研究遂行上の課題は、分析対象となる、新しい公共空間の形成に貢献している、市民ファンドの助成先団体数が多岐にわたる点である。調査対象となる市民ファンド担当者に過剰の負担をかけないようにするため、文献やWeb調査をきめ細かく実施する必要がある。 なお、コミュニティ財団の多くが出席する全国コミュニティ財団協会の定例会にも出席し、ヒアリングや意見交換を行いたい。この取り組みをおこなうことにより、彼らの活動現場での洞察を調査研究内容に組み込むことも可能になると考えている。
|
Causes of Carryover |
人件費・謝金の支出がなかった点が最大の理由である。平成30年度、ポストドクターの学生に入力作業などの研究補助を依頼する計画であり、すでに打ち合わせを行っている。
|