2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K06955
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山本 琢也 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 客員教授 (50212296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 裕二 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (50262879)
鬼塚 貴志 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 特命助教 (90422336)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウラン金属間化合物 / 水素吸収 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウラン金属間化合物UNiZnは3化学式ユニットU3Ni3Zn3からなる単位格子あたり約6個の水素が格子間位置を占有し、優れた水素吸収能力を有することがわかっている。未解明である熱力学的特性(水素平衡圧ー温度関係など)を含めた水素吸収挙動を理解するために、実験と計算による評価を進めた。そのうち計算については、U3Ni3Zn3構造中でのHの最も安定な占有位置と、その位置にHが侵入するのに必要なエネルギー(形成エネルギー)、Hおよび構成原子との間の距離(Hとの最近接原子間距離)、Hおよび最近接原子周りの電子状態(状態密度)等の、高濃度の水素を占有する材料の開発において極めて重要な特徴を明らかにするために、第一原理計算コードVASPを利用した計算を進めた。これまでに、UNiZn金属間化合物及びその水素化物として報告されている2つの結晶構造(ZrNiAl型とAlB2型)のそれぞれについて、H/U比が1/3から2まで(3化学式ユニットあたりに、水素原子が1から6個)となるように水素を格子間位置に配置して、水素化物形成エネルギーを求めたところ、形成エネルギーはH原子数の増加とともに減少し、6個のときが最も安定になり、実験結果と一致することがわかり、Hからの最近接原子間距離および状態密度評価も進めている。実験的には、UNiZn化合物の合成を進めた。第1段階の融解処理と所定の熱処理によって、一部、U:Ni:Zn=1:1:1の化合物相が確認されたが、組成の不均一性も確認されたため、試料全体の組成均一化を図る2段階目の熱処理を進めている。並行して、作成した化合物の水素化特性を調べるための実験装置の整備を行った。また、並行して、各種ウラン金属間化合物の水素吸収特性についてのデータベース構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、初年度の対象としていたUNiZn化合物について、未解明である熱力学的特性(水素平衡圧ー温度関係など)を含めた水素吸収挙動を理解するために、実験と計算による評価を進めた。そのうち計算については、第一原理計算コードVASPを利用した計算を行って、水素化物形成エネルギーを求めたところ、形成エネルギーはH原子数の増加とともに減少し、6個のときが最も安定になり、実験結果と一致することがわかり、また、水素化によってAlB2型同等の構造に変化することも説明づけられた。この点で、当初に初年度計画として目標としていたことがほぼ達成できた。さらに目標以上に、より詳細な情報としてのHからの最近接原子間距離および状態密度評価も達成間近となっている。実験的評価上では、UNiZn化合物の合成を進めてきた結果、第1段階の融解処理と所定の熱処理に成功し、U:Ni:Zn=1:1:1の化合物相が確認された。その十分な均質化を図る第2段階の熱処理と、その水素化実験準備もほぼ順調に進んでいる。一方、当初研究期間の後半に予定していたウラン化合物の水素化特性についてのデータベース化を前倒しで進めるなど、総合的に、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、UNiZnの水素化挙動の実験評価を完了させるとともに、その計算評価についてさらに詳細な検討を行う。それらの関連づけと、これまでに同様の化合物について行われてきた計算と実験の両面による水素化特性評価を併せて検討することにより、ZrNiAl型ウラン金属間化合物の水素吸収特性についての総合的な理解を図る。 それに続いて、ZrNiAl型以外の結晶構造をとるウラン金属間化合物についても、実験と計算の両面から、水素吸収特性の評価を図る。当初の計画の通り、まずは、TiNiSi 型(一部は単斜晶構造の)ウラン金属間化合物である、UTGe、UTSi(ここで、T=Fe,Co,Ni)についての評価を行う。さらに、引き続いて、Mo2FeB2 型結晶構造をとるウラン金属間化合物(U2Co2Sn、U2Co2Al、U2Fe2S)についての評価も図る。また、過去に実験的には挙動が解明されているU-TiやU-Co2元系化合物についても、今まで行われていない計算的な評価を行い、実験との比較から水素化挙動の詳細な理解を図る。 これらを通して得られる、熱力学的、結晶学的データをまとめたデータベースの構築を進め、ウラン金属間化合物の水素化特性の総合的理解と、優れた水素貯蔵材開発上の指針を得る。 これまでの進捗状況からみて、全体として予定通りの進展が期待される。
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Causes of Carryover |
初年度の途中から、客員教員として新たに着任した土屋文准教授(本所属、名城大学)が、研究協力者として本研究に参加することになり、同准教授の経験豊富な第一原理計算及び水素化実験装置整備に関して、大きな貢献を得ることができた。その分不要となったアルバイト雇用による人件費等を節約できたことにより、研究遂行の水準を維持しながらも、研究費に若干の余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度途中から研究協力者として参加した福井大客員教員(名城大、土屋文教授)には、次年度以降も引続き、本研究への参加(特に第一原理計算と水素化実験での貢献)が得られることとなり、研究分担者として加えると同時に、初年度余剰分と次年度以降予算からの若干の分担金を配分し、土屋教授の本拠地からの旅費や実験及び計算用の消耗品に充てることを計画している。同教授の貢献によって不要となった分の人件費(アルバイト謝金など)の分を、分担金配分に充てる格好になる。研究体制、内容について、当初予定通りか、それ以上の水準を維持しながら、研究を遂行していく計画である。
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Research Products
(2 results)