2017 Fiscal Year Research-status Report
小型魚類ALSモデルを用いたTDP-43毒性の理解と制御
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16K07045
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
浅川 和秀 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助教 (30515664)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ALS / TDP-43 / PI3キナーゼ / 運動ニューロン / タンパク質恒常性 / CRISPR-Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヘテロリボ核タンパク質TDP-43のタンパク質恒常性の崩壊によって誘発される脊髄運動ニューロンの機能障害のメカニズムを解析する為のゼブラフィッシュ筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルを構築し、ALSにおける運動ニューロン変性の分子基盤の理解を深めることを目指している。さらに、脊髄運動ニューロンにおけるTDP-43毒性が、PI3キナーゼの活性化によって緩和される、という独自に見出した現象のメカニズムを解明し、PI3キナーゼ経路の機能修飾という視点から、ALS 治療戦略の構築の可能性を検討することを目指している。 H29年度は、まず、TDP-43の遺伝子破壊が脊髄運動ニューロンにもたらす影響を検討した。ゼブラフィッシュには、2つのTDP-43パラログ(tardbpとtardbpl)が存在するが、CRISPR-Cas9法を用いて、tardbpとtardbplのそれぞれのノックアウト系統を作製した。それぞれの単独ノックアウトは生存に影響を与えないが、tardbpとtardbplのダブルノックアウトは致死であった。さらに、tardbpとtardbplダブルノックアウトにおいて、脊髄運動ニューロンの軸索伸長が阻害されることを見出した。また、tardbpとtardbplのダブルノックアウトによる軸索伸長の欠損は、活性化型PI3キナーゼによってレスキューされた。これらの結果は、TDP-43のタンパク質量の増減(タンパク質恒常性の崩壊)が脊髄運動ニューロンに毒性をもたらし、その毒性はPI3キナーゼによってレスキューされることを示している。PI3キナーゼによるレスキューのメカニズムを解明することで、TDP-43タンパク質恒常性の崩壊によってもたらされる細胞毒性の本質に迫ることができるのではないかと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過剰発現と遺伝子破壊の実験により、TDP-43のタンパク質量の増減が共に脊髄運動ニューロンにとって毒性を及ぼすことがわかった。さらに、TDP-43の過剰発現と遺伝子破壊の両方がPI3キナーゼによってレスキューされることから、レスキュー効果を及ぼすPI3キナーゼの下流因子を探索することで、当初の目標である運動ニューロンにおけるTDP-43毒性の本質の理解を達成できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、TDP-43の機能を操作した脊髄運動ニューロンのトランスクリプトーム解析によって、TDP-43毒性のメカニズムに迫ることを主なアプローチとしたが、それと並行して解析していたPI3キナーゼ経路の解析によってTDP-43毒性のメカニズムに迫れる可能性が高まっている。トランスクリプトーム解析の準備を進めつつも、PI3キナーゼ経路によるTDP-43毒性の緩和効果のメカニズムに力点を置いて研究を推進したい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたトランスクリプトーム解析用研究試薬の購入費用について、研究の進行上適切か否かの判断のための研究を現在行なっている。トランスクリプトーム解析を実施する場合、試薬購入に充てる。
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Research Products
(7 results)