2016 Fiscal Year Research-status Report
PTPδを介したSema3A情報伝達と樹状突起発達制御
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16K07062
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中村 史雄 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10262023)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Sema3A / PTPRD / PTP delta / Fyn / 樹状突起 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
チロシンホスファターゼPTPδのSema3A情報伝達への関与を示した論文をJ. Neuroscience投稿したが、大幅な追加実験・検証を求められた。以下に示す実験を行い、PTPδがSema3A情報伝達、特に樹状突起形成に関わる結果を得た。 1)線虫Sema2A-PTP-3(Sema3A、PTPδのホモログ)による軸索投射を検討した。Sema2A, Plexin-2, PTP-3のweak allele mutantを二重変異にするとDD/VDの背側神経束形成が異常になった。このgenetic augmentationは3遺伝子間の遺伝学的相互作用を支持する。 2)大脳皮質初代培養を用いたPTPδによるSrc/Fynの脱リン酸化の検証。野生型及びPTPδノックアウトマウスの大脳皮質の初代培養神経細胞にSema3A刺激を加え、野生型の樹状突起先端でのSrc/FynのC末端Y527の脱リン酸化を見いだした。この変化はノックアウトでは認められなかった。皮質神経細胞の樹状突起においてもPTPδがY527の脱リン酸化に関与することを示す。 3)培養神経細胞におけるSema3A刺激に伴う樹状突起の伸長。大脳皮質初代培養にSema3Aを加えて1日培養し、樹状突起の伸長をMAP2染色で評価した。Sema3A刺激に伴う樹状突起の伸長が野生型では認められたが、PTPδホモ変異では認められなかった。この結果もSema3A-PTPδ経路が樹状突起の発達に関与することを示す。 4)PTPδ・Fynノックアウトマウスの表現型解析 Sema3AやPTPδのホモ変異マウスで見られる皮質錐体細胞・基底樹状突起の発達低下はFynホモ変異や、PTPδ・Fynの二重ヘテロ変異でも認められた。すなわちSema3A-PTPδ-Fynの情報伝達経路が皮質樹状突起の発達を制御することを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究概要に記した投稿論文の追加実験のため、当初計画したH28年度の実験はあまり行えていない。しかし以下に示す検討を行い、新たな結果を得た。 1)SIRPαリン酸化:SIRPαリン酸化部位Y501に対するリン酸化特異抗体を供与頂いて検討した。その結果、野生型に比してPTPδノックアウトマウス脳でY501の過剰リン酸化を認めた。この抗体を用いて野生型、ノックアウトマウス脳の組織染色を行い、SIRPαの脱リン酸化制御が著しい脳部位を明らかにする。また初代培養の細胞染色を行い、神経細胞における局在やSema3A刺激に伴うリン酸化変化を今後明らかにする。 2)新たなリン酸化蛋白質:PTPδノックアウト脳において新たに180kDa蛋白質の過剰チロシンリン酸化を見いだし、同定した。この分子のリン酸化とノックアウトの表現型やSema3A情報伝達、特に樹状突起の発達との関わりを検討している。 3)MAPKシグナルの検討:マウス大脳皮質の初代分散培養にSema3Aを加え、リン酸化MAPKの変化を免疫ブロットで検討した。しかしSema3A刺激に伴う脱リン酸化を再現性よく得ることができなかった。Src/FynのY527脱リン酸化も同じ免疫ブロットでは認められなかったが、免疫染色では樹状突起先端でY527の脱リン酸化が認められることから、MAPKのリン酸化も同様の樹状突起局所変化と考えて今後検討する予定である。 4)PTPδと類縁分子のLARやPTPσがコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)受容体であることから、PTPδのCSPG結合能を検討した。その結果PTPδもCSPG受容体であることや、CSPGによるDRGの軸索伸長抑制作用を媒介することを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は平成29年4月から東京女子医大に異動した。新たな実験室セットアップに時間を要することから、既に採取した検体で行える実験やライブイメージング用の発現ベクター作成などの実験を平成29年度は行う。 1)見いだされたPTPδ基質分子(Fyn、SIRPα、MAPK、180kDa蛋白質)のリン酸化特異抗体を用いて野生型、ノックアウト脳の組織免疫染色を行う。またPTPδ免疫染色も同時に行い、脳の各領域・部位におけるPTPδ基質分子のリン酸化・脱リン酸化を明らかにする。この実験から基質分子のリン酸化とマウス高次機能の関わりが明らかになると考えられる。 2)1)で見いだされるリン酸化がノックアウト>野生型の領域の神経細胞を、初代培養する。この細胞にSema3A刺激を加えて基質分子のリン酸化変化を細胞免疫染色で検討する。 3)野生型の初代培養神経細胞を用いてSema3A、CSPGの刺激を行い、神経突起における1)蛋白質のリン酸化変化を明らかにする。2つのリガンドの細胞内情報伝達の差異が明らかにできると期待される。 4)H29年度に計画したSrc/Fynのリン酸化可視化プローブの発現ベクター作成を行う。機能検証はCOS-7細胞やPC-12等の神経系の培養細胞でまず行う。実験はリン酸化プローブに蛍光蛋白質を付加したものから開始する。Sema3A刺激後などの蛍光プローブの局在変化を見いだしたのちに、FRETプローブによるライブイメージングへと発展させる。
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Causes of Carryover |
J. Neuroscience 投稿論文の追加実験に集中したこと、平成28年度後半に横浜市大から東京女子医大への公募・異動手続きがあったため、計画した実験が十分に行えなかった。また登場女子医大でのラボセットアップに助成金が必要と考え、繰り越した、
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東京女子医大での新しいラボのセットアップ、すなわち実験・解析に必要な抗体試薬、培養試薬、培養ディッシュ等に繰り越した助成金を用いる。また今後の研究方針に記載した実験を行う。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] CRMP1 and CRMP2 have synergistic but distinct roles in dendritic development.2016
Author(s)
Makihara H, Nakai S, Ohkubo W, Yamashita N, Nakamura F, Kiyonari H, Shioi G, Jitsuki-Takahashi A, Nakamura H, Tanaka F, Akase T, Kolattukudy P, Goshima Y.
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Journal Title
Genes Cells
Volume: 21
Pages: 994-1005
DOI
Peer Reviewed
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