2016 Fiscal Year Research-status Report
化学・放射線療法で誘導される細胞老化の臨床的意義と、これを標的とする耐性がん根絶
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16K07187
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
佐藤 郁郎 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), ティッシュバンクセンター, センター長 (50225918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田沼 延公 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 主任研究員 (40333645)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学・放射線療法は、腫瘍細胞に、細胞死や細胞老化を誘導する。このうち、老化細胞は長く生き残り、種々のかたちで治療抵抗性や再発に寄与する点が問題である。本課題では、そのような老化細胞の代謝・関連形質を標的することで、治療誘導性の老化細胞を効率的に除去する治療法の開発を目標に、各種とりくみを行った。 ヒトおよびマウスの細胞株をシスプラチンで処理し、細胞老化関連遺伝子の発現やSA-b-galを指標にして、細胞老化レスポンスをしらべた。この解析によって、そもそもシスプラチンが効かない細胞株、細胞老化を起こしやすい細胞株、細胞老化の兆候をみせることなく細胞死を起こす細胞株、などを分類できた。細胞老化を起こした細胞では、解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM(Pkm)のスプライシング型が、Pkm2からPkm1へとスイッチすることを確認した。 上記のスプライシングスイッチが、代謝をリプログラムし、老化細胞の強い生存力をもたらしている可能性について検討した。具体的には、研究分担者の田沼らが、Pkm1がNAD+代謝の亢進をもたらすことを見出だしていたので、このPkm1-NAD+経路について、解析をおこなった。細胞を免疫不全マウスに移植し、xenograft腫瘍がある程度のサイズになった段階で、治療を開始した。例えば非小細胞肺がん由来のA549細胞は、シスプラチン単独療法に、ほとんど感受性がなかった。それに対し、シスプラチンに加え、Nampt(NAD+合成経路の律速酵素と考えられるNMN合成酵素)阻害剤を上乗せした場合、著しい治療効果がみとめられた。その機序について、引き続き解析をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pkm1スイッチを阻害する新規低分子化合物の同定には至らなかったが、その下流ターゲットを同定したこと、これを標的することで同等と考えられる治療効果を得られたこと、等から、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Pkm1-NAD経路等を中心に、老化細胞の脆弱性を探っていく
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Causes of Carryover |
消耗品費等を当初想定よりも低く抑えられたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用ぶんを有効活用し、積極的に計画をすすめる。
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