2016 Fiscal Year Research-status Report
昆虫から植物へーバッカクキン科菌類の進化過程解明と生物資源としての日本産菌株確立
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16K07238
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
田中 栄爾 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (50433199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分類学 / 生物多様性 / 真菌 / 生物資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本産バッカクキン科植物寄生菌について、すでに採集した標本や新たに採集する標本を基に既往の文献や標本と比較し、新たな分類群の命名記載や分類学的に確実な標本の指定をおこなうことを目的とする。そのために、研究期間の初期は新たに標本を採集することが重要である。最終的に、それらの菌株のDNA 塩基配列データ解析や二次代謝物の解析をおこなうとともに、菌株保存機関に寄託する。また、複数遺伝子座を用いた分子系統解析をおこない、バッカクキン科内で昆虫から植物へのホストジャンプが起きた進化過程を推定することも目的とする。本年度は、形態的にも系統的にもバッカクキン科の昆虫寄生菌と植物寄生菌の中間に位置すると考えられるサンプルの培養性状の検討や形態学的分析など分類学的研究を進めた。また、混乱している日本産バッカクキンClaviceps spp.の分類学的再検討をおこなうため、新たな標本を日本各地で採集した。2016年度だけで112サンプルを採集し、これらの分離培養をおこなうとともに、ITS領域、D1D2領域、TEF1α領域の塩基配列を解読してデータ解析を行っている。これらの結果、例外はあるもののササ類、カモジグサ類、ハマニンニク、チゴザサ、チヂミザサ、スズメノヒエ類、ススキ類、ヨシ類などを宿主とするバッカクキンは予想通りそれぞれ異なる種であると推定できた。また分類学的記載をおこなうため菌核から子実体を発生させる実験も順調に推移している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり日本産バッカクキンの採集を進め、分類学的再検討をおこなうために必要なこれまで未採集であったカモジグサ類などを宿主とするサンプルを十分に得ることができた。しかし、過去の研究に基いて探したもののシバ類、チガヤ類、トダシバを宿主とするバッカクキンは未だ得られていない。次年度はこれら未採集のサンプルに絞って採集活動を行うことができるため、おおむね順調に進展しているといえる。また、新属新組み合わせとして記載する予定のサンプルについても分類学的検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に推移しているため、今後も計画にしたがって研究を推進する。日本産Claviceps属の分類学的再検討については春から夏にかけてチガヤ、夏季はシバ、秋季はトダシバを宿主とするバッカクキンのサンプルを探す。これらが得られれば、日本産バッカクキンの全容がほぼ明らかとなることが期待できる。また、得られたバッカクキンの菌株を用いて、二次代謝産物の分析を進めていく。まずは系統的な位置づけと、アルカロイド類生産との対応を調べていく予定である。
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Research Products
(1 results)