2016 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類神経細胞におけるmRNA・新生ペプチド鎖の品質管理とその生理的意義
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16K07243
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇田川 剛 東北大学, 薬学研究科, 助教 (20644199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 翻訳 / 品質管理 / 脳機能制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
翻訳に依存したmRNA・新生タンパク質品質管理機構であるRibosome-associated quality control (RQC)の哺乳類細胞における分子機構の解析、および、マウス海馬におけるAAVベクターを用いたRQC因子ノックダウンモデルの確立を行った。 当研究室で解析が進められてきた出芽酵母のRQC因子Hel2/RQT1、RQT2、LTN1の哺乳類ホモログであるZNF598、hRQT2、Listerinの解析を行った。GFP及びHis3遺伝子の間に、出芽酵母においてRQCを誘導することが知られている連続したリジン配列(Lys(AAA)24)をin-frameで挿入したレポーターをHEK293T細胞に導入し、上記因子のノックダウンの影響をウェスタンブロットにより解析した。その結果、ZNF598、およびhRQT2のノックダウンは、いずれもLys(AAA)24における翻訳停滞効率の低下、翻訳停滞による短い新生ペプチド鎖の減少が観察され、これらの因子がRQCの誘導に必須な役割を果たすことが示された。一方、ListerinのノックダウンではLys(AAA)24における翻訳停滞産物の蓄積が観察され、出芽酵母LTN1と同様に、Listerinが翻訳停滞産物の分解に関与することが確認された。以上の結果より、基本的なRQCの分子機構は出芽酵母から哺乳類まで保存されていることが示された。 RQC因子の個体における機能を明らかにする目的で、本研究では特にマウス海馬におけるZNF598およびhRQT2の機能解析を行っている。これまでに、shRNAを発現するAAVをマウス海馬に導入しノックダウンモデルを作製することに成功しており、これらのマウスを用いた行動解析を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ZNF598、hRQT2、Listerinが哺乳類細胞におけるRQC因子として機能することがHEK293T細胞におけるレポーター解析により確認された。また、マウス個体を用いた高次脳機能におけるRQC因子の解析を開始しており、すでにノックダウンモデルの作製を確立し、予備的な行動解析データが蓄積しつつある。また、RQCの内在性標的を同定するために次年度に計画していたリボソームプロファイリングについてもすでに実験を開始しており、これらについては当初の計画以上に進展している。 一方で、神経細胞における品質管理因子の発現や局在の確認についてはまだ充分な解析が行うことができていない。ZNF598はHEK293T細胞だけでなく神経細胞にも発現し、神経細胞では主に細胞質に局在し、一部は樹状突起においても検出されることが確認された。一方、RQT2、Listerinについては免疫染色に使用できる抗体が見つかっておらず、ウェスタンブロットによる発現の確認にとどまっている。hRQT2についてはHEK293T細胞における発現は確認されたが、マウス細胞において使用できる抗体が見つかっておらず、マウス個体におけるタンパク質レベルでの発現の確認ができていない。このため、現在、GFPタグを付加した因子の作製を行っており、局在の確認に用いる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
海馬における品質管理因子のノックダウンマウスを用いた高次脳機能解析については、現在進めている、ZNF598に加えて、RQT2についても解析を進めていき、RQC因子の機能低下による共通した行動異常が見られるかどうかを確認する。 リボソームプロファイリングについてはライブラリのシーケンシングを進めるとともに、通常のRNA-seqを行い、リボソームプロファイリングの結果と比較することにより、ZNF598やRQT2のノックダウンにより翻訳効率が変化する遺伝子の同定を試みる。同定された遺伝子については初代培養神経細胞およびノックダウンマウス海馬において発現変化を確認する。また、コドンレベルでのデータ解析を行うことによりRQC誘導配列の同定を試みる。RQC誘導配列が同定された場合には、レポーターアッセイ等により翻訳停滞およびRQC誘導の分子機構の解析を行う。明確なRQC誘導共通配列が同定されなかった場合には、翻訳効率が変化した遺伝子それぞれについて個別に検討を行う。 この他、レポーターを用いたLys(AAA)以外の翻訳停滞、RQC誘導配列の探索、神経細胞におけるRQC因子の発現・局在の確認、樹状突起・シナプス形態へのノックダウンの影響の確認等を進める。
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