2017 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類神経細胞におけるmRNA・新生ペプチド鎖の品質管理とその生理的意義
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16K07243
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宇田川 剛 東北大学, 薬学研究科, 助教 (20644199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 翻訳 / 品質管理 / 脳機能制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
翻訳停滞に起因するmRNA・新生タンパク質品質管理機構Ribosome-associated quality control(RQC)に関わる因子の脳機能における機能を明らかにする目的で、昨年度までに確立したRQC誘導に必須なZNF598およびASCC3の海馬におけるノックダウン(KD)モデルマウスを用いて、複数の高次脳機能解析を行った。その結果、ZNF598 KDマウスでは不安の亢進、長期記憶の異常が確認された。一方、ASCC3 KDマウスでは、ZNF598 KDマウスと同様の長期記憶の異常と、不安の抑制・脱抑制という逆の表現型が観察された。また、ASCC3 KDマウスでは短期記憶の異常も確認された。 また、ZNF598、ASCC3および、RQCにおいて新生タンパク質分解に必須なE3ユビキチンライゲースLTN1の神経突起伸長における機能を確認する目的で、これらの因子をノックダウンした初代培養神経細胞を用いて、神経突起形態の複雑性を定量するSholl解析を行った。これまでに、LTN1 KDにより神経突起複雑性の低下が確認され、さらに、 LTN1とZNF598あるいはASCC3との二重KDにより神経突起の形態異常がレスキューされることが示され、翻訳停滞産物の蓄積が神経突起伸長を阻害することが示唆された。一方、ZNF598, ASCC3の単独KDでは突起伸長の異常は観察されなかった。 以上の結果から、RQCに関わる各因子は神経細胞の異なる発達段階で異なるレベルの重要性を示すことが明らかにされた。神経突起伸長の初期段階では、RQC誘導は必須ではないものの、翻訳停滞産物の除去は重要であり、一方、成熟ニューロンにおいてはRQCの誘導自体が認知機能制御に重要な役割を担うことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ZNF598、ASCC3ノックダウンマウスについて、主要な高次脳機能解析を完了しており、長期記憶の障害や不安の異常といった表現型が観察されている。また、初代培養神経細胞を用いた神経突起の複雑性の解析においては、異常な翻訳停滞産物を除去するLTN1のノックダウンが神経突起伸長を阻害することが示された。以上のように、品質管理因子の脳機能制御における役割を例示することに成功しており、本研究の目的の一つであるRQCの脳機能における重要性の解明という点において、研究は順調に進展していると考えられる。 一方、神経細胞におけるRQCの分子制御機構についてはまだ解析が十分に進んでおらず、特にリボソームプロファイリング等によるRQC標的の同定や、神経細胞内における因子の局在について、今後更なる解析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はZNF598, ASCC3に続いて、LTN1の海馬ノックダウンマウスを作製し、その高次脳機能における影響を解析する。また、Sholl解析で見られたLTN1ノックダウンによる神経突起伸長阻害に翻訳停滞産物の凝集体形成が関わるかどうかを確認するため、RQC2/NEMFノックダウンの神経突起伸長における影響を解析する。RQC2はRQCにおいて解離したリボソームの再会合を防ぐこと、また、解離したリボソーム上に残る新生ペプチド鎖のC末端にアラニン、スレオニンに富んだタグ(CAT tail)を付加することが出芽酵母において示されている。これらの解析により神経突起伸長、およびマウス生体の高次脳機能おけるRQCの作用機構の理解を深める。 さらに、ZNF598とASCC3が学習と記憶に異常を示すことが明らかになったことから、初代培養神経細胞を用いたリボソームプロファイリングの解析を進めるとともに、シナプス可塑性に関与する既知の個別因子の解析も併せて行い、神経細胞におけるRQC標的mRNAの同定を進める。
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[Journal Article] Ubiquitination of stalled ribosome triggers ribosome-associated quality control2017
Author(s)
Matsuo Y, Ikeuchi K, Saeki Y, Iwasaki S, Schmidt C, Udagawa T, Sato F, Tsuchiya H, Becker T, Tanaka K, Ingolia NT, Beckmann R, Inada T
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 8
Pages: 159
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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