2017 Fiscal Year Research-status Report
再生に応答して活性化するゲノム領域から迫る再生能を失うまでの進化プロセスの解明
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16K07362
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
越智 陽城 山形大学, 医学部, 准教授 (00505787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 仁 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90455816)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 器官再生 / 遺伝子発現制御 / シス調節領域 / エンハンサー / 再生シグナル / エピゲノム / ネッタイツメガエル / アフリカツメガエル |
Outline of Annual Research Achievements |
両生類や魚類は哺乳類と比べて、損傷により失われた器官や組織を再構築する高い能力を持つ。この違いについては、再生能をもつ動物が進化の過程でその能力を適応的に獲得してきたという説と、ほ乳類が進化の過程でその能力を失ってきたとする説が唱えら れてきた。一方で、ゲノムの比較解析と遺伝子の機能の解析からは、脊椎動物の発生再生に関わる遺伝子は、その種類、数、機能が、進化的に高度に保存されていることが示されている。これら発生遺伝学や機能ゲノム学的な結果を鑑みれば、再生能の高い動物が進化の過程でその能力を獲得したというよりも、ほ乳類が進化にともない再生能を失った可能性が高く、その実体は遺伝子の消失よりも、 再生に使う遺伝子の発現システムが変化したことが要因であると予想される。しかしながらこれまで、ほ乳類の再生能を失わせるに至った発現システムに迫った研究はほとんどない。そこで本研究は、両生類の再生に応答して活性化するゲノム領域を足がかりとして、 非コードDNA領域に刻まれた再生能を失うまでの進化プロセスの解明を目指すものである。平成28年度は、ネフロンの再生に関わるlhx1のゲノム領域で、再生時に活性化するエンハンサーのスクリーニングを行い、lhx1ゲノム領域の再生シグナル応答エンハンサー配列は再生可能動物とほ乳類の間で保存されていること、ほ乳類のその領域は両生類のネフロンの再生時にエンハンサーとして機能することを明らかにしている。本年度はこれら成果を受けてエンハンサーへの入力因子の探索から、再生可能動物とほ乳類の間での再生能の違いについて検討する予定であった。計画に基づき研究を遂行し、入力因子の候補の1つが再生グナル応答エンハンサーに直接結合すること、その入力因子がエピジェネティック制御因子と協調的に働き、エンハンサー近傍のエピゲノム状態を変えることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進化の過程で再生能力を失う要因の1つとして、祖先種に存在した再生シグナル応答エンハンサーが、ほ乳類ゲノムで欠損している可能性が挙げられる。平成28年度は、lhx1のゲノム領域で両生類の再生時にその発現を担うエンハンサーをトランスジェニック解析より同定し、少なくとも、再生過程でのlhx1の発現を担うエンハンサーは、再生能の高い動物間のみで保存されているゲノム領域を使っているのではなく、ほ乳類ゲノムにも保存されている領域を活用していること、これらほ乳類でも保存されている領域は両生類の再生時にエンハンサーとして機能することを明らかとした。これらからそれらエンハンサーのエピゲノム状態を変える入力因子が両者の再生能の差の要因として挙げられ、本年度は入力因子の同定と、その入力因子と共にエピゲノム状態を変える因子の探索を行う予定であった。計画に基づき研究を遂行し、候補因子の中から直接エンハンサーに結合する転写因子の同定、ならびにその転写因子と協調的に働くエピジェネティック制御因子の同定に成功した。またそれら入力因子の複合体がlhx1ゲノム領域の再生シグナル応答エンハンサーのエピゲノム状態を変化させること、そのエピゲノム修飾を変えることで両生類のネフロン再生が阻害されることを明らかとした。これらより研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに、再生可能動物とほ乳類の間で保存されている再生シグナル応答エンハンサーの入力因子とエピジェネティック制御因子を同定した。平成30年度はこれら成果を受け、ほ乳類の再性能を失わせている要因が同定した入力因子とエピジェネティック制御因子の働きの違いによるものか検討する。また再生可能動物とほ乳類の間でみられるlhx1ゲノム領域のエピゲノム制御の差異が他の組織再生においても当てはまるのか、その普遍性について検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の成果を受け、本年度は両生類とほ乳類のlhx1の再生シグナル応答エンハンサーのエピゲノム状態の解析を行う予定であった。両生類ゲノム中のエンハンサーについては計画通りにエピゲノム解析を終えたものの、哺乳類のその解析についてはやや遅れが生じたため、使用予定あったマウスが未購入となった。平成30年度の早期に研究計画に従いマウスのエンハンサー解析を行い、次年度使用額を使用する計画である。
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