2018 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞の未分化状態の解除に関わる遺伝子発現制御機構
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16K07396
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
槻木 竜二 京都大学, 理学研究科, 助教 (50303805)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞らしさの維持についての研究は多いが、幹細胞らしさの抑制に着目した研究はほとんどない。植物の幹細胞らしさの抑制に関わる遺伝子としてVAHとEVAHを見出している。 1)VAHが、茎頂領域においてだけでなく、根端分裂組織や維管束幹細胞組織において、幹細胞らしさの抑制に貢献していることを見いだした。 2)VAHと共に働くENHANCER OF VAH(EVAH)遺伝子を同定している。VAHとEVAH両方の遺伝子の機能が損なわれたvah evah二重変異体では、茎頂分裂組織領域の拡大が観察される。VAH/EVAHは、CLV3の経路とは別の仕組みで茎頂領域の幹細胞に負の影響を与えることを見いだした。本研究から、VAH/EVAHは、新規な幹細胞ブレーキとして働くことを提唱している。 3)ショ糖が幹細胞らしさに正の影響があることを見いだしている。ショ糖はWUSの発現上昇を誘導する。更に、ショ糖によって成長が促進されるような条件で、VAHは幹細胞ホメオスタシスにより貢献することも見いだしている。ショ糖により、VAHの発現が増加することを見いだした。ショ糖は、幹細胞らしさに正の影響を与えるが、同時にVAHの発現を誘導して、幹細胞ブレーキを用意していると考えられる。 4)VAHの生化学的解析等のための実験系の確立を行った。芽生え等の植物では、VAHが働く幹細胞領域が非常に限られており、生化学的解析には材料について工夫が必要であった。その打開策として、組織培養を用いた系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、VAHと共に働く複数の因子の同定に成功しており、それらとVAH遺伝子の遺伝学的関係の解析など、順調に研究が進んでいる。VAHのみならず、VAHと共に働く因子は、植物発生や幹細胞制御の観点から、ほとんど解析されていない。更には、植物幹細胞の幹細胞らしさの解除についての知見はほとんど報告されていない。本研究を進めることにより、植物発生の中心とも言える植物幹細胞制御に関する新規な知見が得られると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、VAHと共に働く因子を複数同定し、VAHが転写の調節に関わることが示唆されている。これらを踏まえ、以下の解析を進める。 1)VAHを介した遺伝子発現制御機構を明らかにするために、VAHと共に働く転写因子に対する特異抗体などを用いてクロマチン免疫沈降を行い、VAHや同転写因子のゲノムへの結合への様子を解析する。vah変異体などでは、同転写因子のゲノムへの結合に異常が見られる可能性がある。 2)VAHと相互作用する因子を網羅的に同定するため、VAHタンパク質複合体を精製し、構成成分を同定する。 3)VAH、VAHと共に働く転写因子の機能を明らかにするため、これら遺伝子の遺伝学的解析や発現解析を行う。多重変異体を作製して、遺伝学的関係も明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成30年度に、VAHタンパク質の生化学的解析や分子生物学的解析を行う予定であったが、これら解析により良い実験系の確立を行なっていた。そのため、補助事業期間の延長を行い、未使用額が生じた。 (使用計画) 芽生え等の通常の植物では、VAHが働く幹細胞領域が非常に限られており、未知の因子の同定や、VAHが関わる遺伝子発現制御の解析には工夫が必要であった。平成30年度の研究から、その打開策として、組織培養を用いた系を確立した。延長年においては、この系を用いて、VAHの生化学的解析や分子生物学的解析を行い、新規因子の同定と解析を進める。
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Research Products
(4 results)