2016 Fiscal Year Research-status Report
琉球列島の海底洞窟における大型ベントスの個体群維持機構に関する研究
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16K07490
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
藤田 喜久 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (20771463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 貫 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30398309)
井口 亮 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 助教 (50547502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海底洞窟 / ベントス / 生物多様性 / 甲殻類 / 海綿類 |
Outline of Annual Research Achievements |
琉球列島のサンゴ礁浅海域の海底洞窟に生息する大型ベントス(主に海綿類,貝類,甲殻類)を対象として,①海底洞窟環境調査(洞内の地形および物理化学環境の特性の解明),②海底洞窟性動物の群集構造および生態分布調査,③海底洞窟性動物の生活史特性調査,に関する研究を実施した。初年度(H28年度)は,沖縄島宜名真の海底鍾乳洞(以降,宜名真洞窟とする),伊江島北東部の海底洞窟(以降,伊江島洞窟とする),宮古諸島下地島の海底洞窟(以降,下地島洞窟とする)の計3カ所において調査を実施した。 「①海底洞窟環境調査」については,宜名真洞窟および伊江島洞窟において,洞窟地形断面図および平面図を作成し,洞窟内の水温および塩分を記録するためのデータロガーを設置した(水温ロガーについては1年間の記録中であるが,塩分ロガーについては数日間のみ設置して回収した)。塩分ロガーの計測結果からは,宜名真洞窟および下地島洞窟の最奥部は,塩分が低く,アンキアライン(陸封潮溜まり)環境であることが確認された。 「②海底洞窟性動物調査」については,宜名真洞窟,伊江島洞窟,下地島洞窟において採集調査を行った。現在,同定作業と各洞窟における生物相リスト作成を進めているが,甲殻類については,少なくともコエビ下目(エビ類)において4未記載種,短尾下目(カニ類)において1未記載種および1日本初記録種,テルモスバエナ目において1未記載種が含まれており,記載作業を進めている(テルモスバエナ目甲殻類については論文を投稿中である)。また,海綿類においても多種の未記載種および国内未記録種が含まれており,特に硬骨海綿類について,2未記載種を確認し,現在,記載作業を進めている。 「③海底洞窟性動物の生活史特性調査」については,これまで採集された標本の分子遺伝的解析を進め,海底洞窟生物の遺伝情報の収集およびデータベース化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(H28年度)調査では,当初沖縄島および伊江島における洞窟調査を予定していたが,天候・海況にも恵まれたため,宮古諸島下地島においても調査を実施することができた。ただし,各調査地での調査洞窟数は当初計画では2~3箇所を予定していたが,予想以上に作業に時間を要したため,各調査地での調査洞窟数は1箇所ずつとした。 本申請研究で予定していた調査項目(①海底洞窟環境調査,②海底洞窟性動物の群集構造および生態分布調査,③海底洞窟性動物の生活史特性調査)の3点のうち,「①海底洞窟環境調査」については,予定していた洞窟地形断面図および平面図およびデータロガー(水温および塩分計測)の設置をすべて終了した。 「②海底洞窟性動物の群集構造および生態分布調査」については,各調査洞窟内動物の種構成リストは順調に進んでおり,多数の未記載種および国内未記録種を発見することができた。一方,洞内における群集構造と生態分布調査については,次年度(H29)に調査を予定している。 「③海底洞窟性動物の生活史特性調査」については,採集した標本を基に,遺伝学的手法を用いた各種解析を開始した。一方,採集動物の個体分析(体サイズ計測,性査定,生殖器官や生殖巣の発達状況,食性など)については,採集した標本の分析を次年度(H29)に予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目(H29年度)は,沖縄島,伊江島,下地島の2回目の調査を行うと共に,まだ調査を実施していない久米島での2回の調査を行う予定である。当初計画では,最終年度(H30年度)に野外調査を終了する予定であったが,初年度(H28年度)調査により,沖縄島,伊江島,下地島における野外調査が順調に進んだため,予定を繰り上げ,野外調査を2年目ですべて終了する予定である。 2年目の後半から最終年度は,野外調査により収集した各データの解析と論文化を進めると共に,学会発表などでの成果公表も積極的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の発生は,研究分担者(井口)への分配金によるものである。初年度(H28年度)は,本人の体調不良(入院)により野外調査への参加が困難になったため,調査旅費および物品購入などの使用ができていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者(井口)が担当する遺伝子解析等の作業に使用する。
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Research Products
(4 results)