2016 Fiscal Year Research-status Report
沿岸内在性十脚甲殻類の網羅的探索:環境DNAによるモニタリングに向けた基盤形成
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16K07494
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
駒井 智幸 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (20260242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮 正樹 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (30250137)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プライマー / 新種 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京湾(三番瀬)、相模湾東部において野外調査を行い、内在性十脚類を中心に標本および環境DNA抽出用の海水サンプルの採集を行った。三番瀬においては、底質中に穴居する二ホンスナモグリが多く生息することがわかっており、干潮時における底質上の海水と、サクションポンプで底質を掘り起こした穴にたまった海水のろ過採水を行い、内在性種のDNAを検出できるかどうかの比較検討を行うことを目的としたサンプリングを行った。採水したサンプルからのDNA抽出は終了した。 また、千葉県立中央博物館に冷凍状態で蓄積されていた標本からDNA抽出用のサンプルを作成し、DNAの抽出を進めてきた。平成28年度末(2017年3月31日)の時点で60種あまりの十脚目甲殻類からDNAの抽出を行った。 メタバーコーディングに適したミトコンドリアDNAの遺伝子領域を検討するため、GenBankのデータベースから十脚目の全配塩基列を集め、12S rRNAと16S rRNA遺伝子について、有用性の検討を行い、十脚目用汎用プライマー設計の可能性を探った。 千葉県立中央博物館に所蔵されている内在性甲殻類の資料の検討を進め、論文を2編投稿した。そのうち1編はすでに発表され、新種としてアナジャコ科のGebiacantha sagamiensis Komai, 2017(サガミトゲアナジャコ)を記載した。もう1編では、小笠原諸島父島から新種として記載されたスナモグリ科の一種Gilvossius chichijimaensis Sakai, 2015の妥当性を検討し、既知種Paratrypaea bouvieri (Nobili, 1904)と同種であると結論付け、分類学的な混乱を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
環境DNA抽出サンプルからのメタバーコーディングにあたり、種の判別に有用な領域を効果的に増幅するためのプライマーを設計する必要があるが、幅広い分類群にわたる汎用性の高い領域の特定がまだできていない。状況によっては、ある程度分類群の範囲を絞る必要が生じるかもしれない。 DNA分析用の標本の新規採集と種の検討に関わる分類学的な研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
種の判別に有用なミトコンドリア遺伝子の領域の特定と、効果的な増幅を可能とするプライマーの設計を進める。分類群の範囲を狭める可能性も含めて検討を進める。 内在性種のインベントリーの空白地域と沿岸水採水の地域をできるだけ埋めていくように、野外調査を進める必要がある。今後は、九州沿岸~琉球諸島の調査を実施し、標本の新規採集と環境水のサンプリングを継続する。 分類学的な研究を確実に進めるため、新規採集した標本の検討とこれまでに蓄積してきた標本の検討を効果的に進め、新知見についての公表を進める。
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Causes of Carryover |
前年度予定されていた野外調査がが所属する館の事業等により予定通りに実施されなかったことと、消耗品等物品類の割引率が予想より大きかったことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料整理の人件費として使用する。
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