2020 Fiscal Year Research-status Report
湿潤変動帯の山岳森林域における地ー植生構造とその進化的背景
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16K07509
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
酒井 暁子 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20344715)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 樹木分布 / 微地形 / 地形ニッチ / 系統シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
丹沢山地の306ha集水域において出現頻度が高い樹種28種を対象に、多変量解析によって各樹種の地形的分布傾向(地形ニッチ)を調べた結果、地形ニッチは主要2軸上の位置で説明することができた。第一軸は地表の安定性に関連した環境傾度で、尾根周辺の安定した緩斜面から谷周辺の崩れやすい急斜面に向けての傾度、第二軸は植物の生育環境として一般的な好環境である谷周辺の土壌が厚い南向き斜面から悪環境である尾根周辺の土壌が薄い北向き斜面にかけての傾度である。これら軸上の位置で記述した地形的ニッチの進化系統樹上での変遷やニッチの類縁性と系統的な距離との関係を解析した。その結果、上記第二軸のスコアには系統的保守性が検出され、現生の樹木種の地形的配列には種子植物の進化史が関わっていることが示唆された。一方、第一軸のスコアは系統関係とは無関係であった。地形ニッチ第一軸は、現在の東アジアの地球科学的背景を基盤とする地形プロセスが反映された生息地の主要空間構造に対応したものであり、樹種の地形的配列を強く規定するものであるが、その成立は植物の進化史においては比較的新しいと考えられ、そのため多様な分類群で派生的なニッチ進化が生じたものと推察された。本科研ではKitagawa etal.(2020)にまとめたが、その一般性と地域特殊性を明らかにするために、同様の手法を植生帯が異なる他地域でのデータ(Sakai and Ohsawa 1994)に当てはめ、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査が想定したように進められないため十分な成果を挙げたとは言えないが、概ね妥当に進めていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
進行中の解析を進め、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
昨年度は研究作業を進めることがあまりできなかったこともあり本助成金は用いなかった。来年度は追加の野外調査とそのとりまとめ、学会発表、論文出版に用いる。
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