2017 Fiscal Year Research-status Report
放線菌汎用宿主における安定した物質生産のための遺伝子導入技術の開発
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16K07674
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小松 護 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (40414057)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放線菌 / 線状プラスミド / 二次代謝産物生産 / 異種発現 / 接合伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、S. avermitilisの大規模欠失体(SUKA株)を宿主とした異種発現系を開発し、二次代謝産物の効果的な生産を目指して研究を進めてきた。これまで、本菌の制限系により、100 kbを超える様な巨大な生合成遺伝子群の導入が困難であったが、線状プラスミドSAP1に種々のファージ由来のattBサイトを導入してベクター化した結果、接合伝達により効率良く導入する事が可能となった。前年度では、SAP1ベクターに導入した、生合成遺伝子クラスターを含む組込型ベクターを染色体上へ移動する手法を開発した。これにより、導入した遺伝子クラスターがより安定して宿主に保持されることが期待できる。本年度は、目的遺伝子を染色体上に移動した後の不要なSAP1ベクターを効率良く脱落させる系の開発を試みた。これにより、SAP1ベクターを用いた多重遺伝子導入が可能となり、SUKA株を用いたコンビナトリアル生合成への応用が期待できる。そこで、CRISPR/Cas9系を用いて、SAP1の分配に関与するParA遺伝子を標的とした剪断によって、SAP1ベクターを脱落させる系の開発を目指した。CRISPR/Cas9発現ベクター(ACS synth. biol.4:723, 2015)を用いて、parAの部分配列を有するgRNAを連結した後、SUKA株に導入して発現させた。その結果、極めて低い頻度(1%以下)ではあったが、SAP1ベクターの脱落が確認できた。しかしながら、さらに効率良く脱落させるため、Cre/loxP系による方法を再検討した。SAP1ベクター上のparAを挟み込むように、2つのloxPを導入した新たなSAP1ベクター(SAP1.14)を構築した。SAP1.14を保持するSUKA株にCre発現ベクターを導入した結果、高い効率(20%以上)でSAP1.14が脱落することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、SAP1ベクターを用いて導入した生合成遺伝子クラスターを含む組込型ベクターが、SUKA株内在性のアタッチメントサイト(attB)に部位特異的に転移することを見出した。詳細な機構は不明であるが、おそらく、組込型ベクター上のintがコードするintegraseの逆反応活性によるものと推測された。SAP1を保持している細胞に対して、SAP1ベクターを再度導入する場合、不和合成によって導入効率が約千倍以上低下する。よって、SAP1ベクターを用いた多重遺伝子導入のためには、SAP1を脱落させることが肝要である。本年度は、目的遺伝子を染色体上に移動した後の不要なSAP1ベクターを効率良く脱落させる系の開発を試みた。既に開発されていた放線菌で使用可能なCRISPR/Cas9発現ベクターであるpCRISPomyces2 (ACS synth. biol.4:723, 2015)を用いて、SAP1の安定性に関与するparA領域の部位特異的剪断によってSAP1を容易に脱落させることが可能であると推測した。しかしながら、本発現ベクターの導入のみで、SUKA株の生育が著しく低下した。また、SAP1ベクターの脱落頻度が1%以下と極めて低い頻度であった。そこでさらに効率良くSAP1ベクターを脱落させるため、Cre/loxP系による方法を再検討した結果、parAを挟み込むように、2つのloxPを導入しCreを発現させることによって高い効率(20%以上)でSAP1ベクターが脱落することを確認した。これによりSAP1ベクターを用いた、巨大な生合成遺伝子クラスターの多重導入を行うことが可能となり、コンビナトリアル生合成を行うための技術基盤の確立が出来た。よって、現在までに、研究計画に沿っておおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、線状プラスミドSAP1をベクター化し、S. avermitilis大規模欠失体(SUKA株)に2次代謝産物生合成遺伝子を接合伝達によって導入する方法を確立した。これによって、高い制限系のためこれまで困難であった、100 kbを超えるI型ポリケチド合成酵素遺伝子や非リボソーム型ペプチド合成酵素を含む巨大な2次代謝産物生合成遺伝子を導入することが可能となった。前年度までに、SAP1ベクターを用いた、多重遺伝子導入の方法を確立し、複数の巨大な遺伝子クラスターを導入出来るようになった。 本年度においては、物質生産能力の高いS. avermitilis SUKA株を用いたコンビナトリアル生合成を行うための基盤技術の確立を目指す。近年、膨大な遺伝子情報を活用した情報科学的処理、所謂ゲノムマイニングによって新たな活性物質の候補を遺伝子情報から見つけ出すことが出来る。また、その中から既知の母核構造と類似するが、側鎖構造が全く異なる生合成経路を見つけ出すことが出来る。これらの側鎖構造の修飾酵素遺伝子群を既知の生合成経路と掛け合わせる(異なる生合成経路の同時導入)ことによって、非天然型の新規誘導体の創製を行う。
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[Journal Article] 1.Neothioviridamide, a Polythioamide Compound Produced by Heterologous Expression of a Streptomyces sp. Cryptic RiPP Biosynthetic Gene Cluster.2018
Author(s)
Kawahara T, Izumikawa M, Kozone I, Hashimoto J, Kagaya N, Koiwai H, Komatsu M, Fujie M, Sato N, Ikeda H, Shin-Ya K.
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Journal Title
J. Nat. Prod.
Volume: 81
Pages: 264-269
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] eterologous production of kasugamycin, an aminoglycoside antibiotic from Streptomyces kasugaensis, in Streptomyces lividans and Rhodococcus erythropolis L-88 by constitutive expression of the biosynthetic gene cluster.2017
Author(s)
Kasuga K, Sasaki A, Matsuo T, Yamamoto C, Minato Y, Kuwahara N, Fujii C, Kobayashi M, Agematu H, Tamura T, Komatsu M, Ishikawa J, Ikeda H, Kojima I.
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Journal Title
Appl. Microbiol. Biotechnol.
Volume: 101
Pages: 4259-4268
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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