2018 Fiscal Year Annual Research Report
Social science review on GMOs and its future prospects
Project/Area Number |
16K07904
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
三石 誠司 宮城大学, 食産業学群(部), 教授 (10438096)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子組換え作物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝子組換え作物をめぐる社会科学面からの過去の研究のレビューと最近の業界の動向を中心に研究を実施した。先行研究の数は自然科学面に比べると多いとはいえないが、しっかりとした研究が複数存在することが確認された。 また、最近の動向は、長期にわたり大手6社による寡占状態が継続していた農薬・種子業界は、デュポン社とダウ社の合併、中国加工集団によるシンジェンタ社の買収、そしてバイエル社によるモンサント社の買収など、業界再編が進展する中で、訴訟という手続きが急増していることが明らかとなった。これまでGM作物に関する訴訟のなかで最も有名なものとしては、はシュマイザー・モンサント事件であり、この内容は既に複数の先行研究で紹介されている。 これに対し、近年は全く異なる形での訴訟が発生している。例えば、2018年夏には米国カリフォルニア州の裁判所の陪審は、モンサント社の除草剤を使用したことによりがんを発症したという男性の訴えを認め、同社は安全性に対する警告を怠ったとして高額の賠償金支払いの決定がなされたこと、また、食品企業側が原材料としてGM作物を使用した自社食品に対し、どのような対応を取るかを明確にする前に、安全性だけでなく、「透明性」を論拠とした訴訟が頻発したことなどにより、食品企業側の対応がいくつかに分かれる状況が出現していることが明らかとなった。 これは、遺伝子組換え作物をめぐる争いが、米国における訴訟の世界でも新たな段階、つまり農家だけでなく、食品企業の原材料表示というレベルにその焦点がシフトしつつあることである。研究終了時点では、米国食品大手の対応もいくつかのタイプに分かれているが、今後、どのような形で対応を変化・継続していくかについては引き続き注視し、検討することとしたい。
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