2016 Fiscal Year Research-status Report
後継牛確保の得策と公共育成牧場の展開条件に関する研究
Project/Area Number |
16K07910
|
Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
長田 雅宏 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 准教授 (40610712)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 壯行 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (30247085)
牛島 仁 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (10549562)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 後継牛確保 / 公共育成牧場 / 性選別技術 / 自家育成牛生産費 / 肉用素牛価格 / 乳牛初妊牛価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は後継牛確保の選択性および性判別技術の利用について、北海道JAつるい丹頂農協管内144戸および山梨県下酪農家58戸に対してアンケート調査を実施した。 北海道のアンケート結果は、平成29年度日本畜産学会第122回大会(2017.3.28~30)において研究分担者である小澤壯行教授と連名で「草地酪農地帯における後継牛確保と性選別技術JA釧路丹頂管内アンケート結果報告」として発表した。山梨県のアンケート結果は、平成28年関東畜産学会第71回大会(2016.11.18)において、研究分担者である小澤壯行教授と連名で「後継牛確保と性選別技術利用の累計的把握-山梨県下酪農経営アンケート-」と題してポスター発表を行った。また、栃木県のアンケート結果を論文投稿し、日本農業経営学会、農業経営研究、第54巻第4号2017.1、「後継牛確保の選択性と性判別技術の受容性との類型的把握」として掲載した。 28年度計画にも明記したとおり、自給飼料の利活用も重要な後継牛確保の方策であることから、八ヶ岳中央農業実践大学校の放牧酪農に関連する経営調査、および栃木県の公共育成牧場に対して調査を実施した。この成果は、畜産コンサルタント2016年4月号に放牧の多面機能の特集として「府県型放牧酪農の実際と六次産業化への発展可能性」と題して掲載、さらに酪農ジャーナル2016年9月号に「都府県酪農における後継牛確保と公共育成牧場の役割」として特集で掲載した。 研究の実績は研究報告として公表し、論文発表1報告、関連の専門誌2報告の実績にもつながっている。さらに口頭発表、ポスター発表により各研究機関へ取り組みを表明したことから共同研究の要請が相次いでいる。29年度はこれら研究機関との共同研究によりさらに深化したいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28年度は都府県酪農の後継牛確保の現状と課題を抽出し、北海道酪農における乳牛初妊牛の生産状況をアンケート調査で明らかにすることができた。しかし、この状況に至る要因分析が不完全であり、29年度は初妊牛価格の高騰の要因を肉用子牛価格、授精状況、分娩状況など生産状況から明らかにする。また、性選別技術の利用によって乳牛雌子牛は増産できると仮定して研究に臨んだが、結果として選択性・効率性は改善され肉用子牛生産は順調であるが乳牛雌子牛の増頭に結びついていない。問題点として、栃木県の酪農協では性選別精液の利用料を5倍近くまで延ばしているが雌子牛は増えていないことが明らかになっている。性選別精液利用に際し、クラスター事業や自治体独自の助成がなされているが効果は認められていない。この要因について再度アンケート調査から明らかにしたい。また、都府県における後継牛確保の究明と計画に掲げているにもかかわらず、関東地域に集中していることから、西日本に対して調査を実施して後継牛確保の得策を提示することに努めたい。 調査を遂行するにあたり以下の問題点が浮上している。一つは後継牛確保と黒毛和牛受精卵移植の進展である。性判別技術の利用によりある程度の雌子牛を確保した多くの経営は、和牛受精卵を移植している。肥育経営には好都合であるが、現況乳用牛の飼養頭数が減少しているなかで、増産体制には移行できていないことは疑う余地はない。次に公共育成牧場の受け入れ態勢である。都府県の公共牧場利用率は80%を超え、今後は北海道の預託サービスを利用することが求められる。しかし、これらの調査は行われていないことから、今後は北海道も含めて育成牧場の課題を究明する。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに学会発表や山梨県畜産試験場と共同開催のシンポジウム(2016.3.7開催)において研究成果を発表してきた。引き続き調査内容、分析結果について各地方自治体、農業協同組合のシンポジウムに積極的に参加したい。また、研究については統計分析に力を入れて日本酪農の現状を把握し、その対応のための推進事業、普及指導に活用できる方策を導きさらに研究を深化させたい。 研究方法として、従来のアンケート調査に頼らず、ヒアリングを中心に個別経営における実際からミクロ的研究に取り組みたい。また、最終年度は調査結果・成果の冊子を作成し、関係機関や酪農家に配布することも検討中である。研究計画に変更はなく課題に取り組んでいるが、総額270万円の事業費では不完全に終わることが避けられない。残りの研究期間において精査し、必要であれば再度科研費獲得に望みたい。
|
Causes of Carryover |
研究は計画どおりに進捗しているが、計画当初の交通費、調査回数に多少の誤差が生じた。よって繰越金が発生したが全く問題ないと考える。次年度はさらに調査回数が増えることが予測されることから、助成金の使用に差し支えは生じない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査回数を増加し、研究目的の達成に努めたい。
|
Research Products
(10 results)