2018 Fiscal Year Research-status Report
ほ場群落における光環境の時空間的不均一性が作物の成長過程に与える影響
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16K07969
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山下 恵 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70523596)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光環境 / 相対PPFD / UAV / 草高 / 葉面積指数 / 乾物重 / 植生指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度まで主にコムギとダイズを対象作物としてきたが,今年度は,新たに水田ほ場(約40m×12m)において,3品種のイネを対象に観測調査を実施した。 移植後から収穫期までの約3.5ヶ月間,2週間毎に,UAV(小型無人飛行機)による対象ほ場の重複画像撮影,分光放射計を用いたイネの分光反射率測定,デジタルカメラによる可視画像撮影,生育調査(草丈,葉面積指数:LAI,SPAD値,器官別乾物重)を実施した。また,3品種・3施肥水準9箇所の群落下部および群落上端に小型メモリ付光量子センサを設置し,群落内外の光合成光量子束密度(PPFD)を測定した。これら観測調査データを基に解析した結果,以下の成果が得られた。 UAV空撮画像から復元した3次元モデルを用いて算出したイネの草高と実測による草丈とは非常によい関係を示していた。また,草丈とLAIおよび全乾物重との関係式を用いて,草高からLAIおよび全乾物重を推定するモデルを構築した。さらに,イネ草高の面データからLAIおよび全乾物重の時系列分布マップを作成した。 分光反射率およびデジタルカメラ画像から算出可能な各種植生指標と生育調査結果との関係を調べ,生育量モニタリングに有効な植生指標について検討した。従来使用されてきた正規化指標よりもシンプルな比で示した指標のほうがLAIや乾物重を精度よく説明できることが分かった。 群落内光環境(群落内外の相対PPFD)と草高の時系列変化を生育段階と併せて明らかにした。さらに,過去の観測データ解析を行い,全天画像から得られる空の状態要素(雲量・太陽出現の有無・相対的明るさ)を用いて全天・散乱PPFDを推定する手法を確立した。 以上の成果やこれまでの成果を統合した解析を進めることで,大気・空の状態および作物の3次元構造に起因する群落内外の光環境の時間的・空間的不均一性が成長過程に与える影響を明らかにできると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はイネの生育調査を定期的に実施できたことによって,UAV空撮画像から算出可能な草高や地上で測定した分光反射率やデジタルカメラ画像から得られる各種植生指標との比較によって,時空間的な生育量のモニタリングが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,光環境の時間的・空間的不均一性が成長過程にあたえる影響を評価し,ほ場群落レベルでの光環境-成長モデルの構築に向けて,これまでの実測データに加え,継続したデータ観測が必要となる。そのためには,本研究課題終了後も引き続き観測データを蓄積するとともに,播種間隔や株数の異なる栽培をいくつか設定し,モデルの構築や検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ジャーナルへの投稿予定の論文執筆作業に時間を要しており,事業期間中に論文掲載が確定することが困難と考えられ,本課題の成果公表が次年度になる。 2019年度なるべく早いうちに論文を完成させ,英文校正および再校正に係る経費およびジャーナル投稿料として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)